古事記 吉野の舞子歌~原文対訳

志都歌 古事記
下巻⑥
21代 雄略天皇
吉野の舞子歌
蜻蛉島の歌
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
天皇。  天皇  天皇が
幸行吉野宮之時。 吉野えしのの宮にいでましし時、 吉野の宮においでになりました時に、
吉野川之濱。 吉野川の邊に、 吉野川のほとりに
有童女。
其形姿美麗。
童女をとめあり、
それ形姿美麗かほよかりき。
美しい孃子がおりました。
故婚是童女而。 かれこの童女を召して、 そこでこの孃子を召して
還坐於宮。 宮に還りましき。 宮にお還りになりました。
     
後更亦
幸行吉野之時。
後に更に
吉野えしのにいでましし時に、
後に更に
吉野においでになりました時に、

其童女之所遇。
その童女の遇ひし所に
留まりまして、
その孃子に遇いました處に
お留まりになつて、
於其處立
大御呉床而。
其處そこに
大御呉床あぐらを立てて、
其處に
お椅子を立てて、
坐其御呉床。 その御呉床にましまして、 そのお椅子においでになつて
彈御琴。 御琴を彈かして、 琴をお彈きになり、
令爲儛其孃子。 その童女に儛はしめたまひき。 その孃子に舞まわしめられました。
爾因
其孃子之好儛。
ここに
その童女の好く儛へるに因りて、
その孃子は好く舞いましたので、
作御歌。 御歌よみしたまひき。 歌をお詠みになりました。
     
其歌曰。 その御歌、 その御歌は、
     
阿具良韋能 呉床座あぐらゐの 椅子にいる
加微能美弖母知 神の御手もち 神樣が御手みてずから
比久許登爾 彈く琴に 彈かれる琴に
麻比須流袁美那 舞する女をみな、 舞を舞う女は
登許余爾母加母 常世とこよにもがも。 永久にいてほしいことだな。
志都歌 古事記
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吉野の舞子歌
蜻蛉島の歌