枕草子29段 心ときめきするもの

にくき 枕草子
上巻上
29段
心ときめき
過ぎにし方

(旧)大系:29段
新大系:26段、新編全集:27段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:29段
 


 
 心ときめするもの 雀の子飼ひ。ちご遊ばする所の前わたる。よき薫き物たきてひとり臥したる。唐鏡の少しくらき見たる。よき男の車とどめて案内し、問はせたる。
 

 頭洗ひ、化粧じて、かうばしうしみたる衣など着たる。ことに見る人なき所にても、心のうちは、なほいとをかし。待つ人などのある夜、雨の音、風の吹きゆるがすも、ふとおどろかる。