古事記~御諸山の神 原文対訳

少名毘古那の神 古事記
上巻 第三部
大国主の物語
御諸山の神
大年神からの系譜
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
於是大國主神
愁而。告
 ここに大國主の神
愁へて告りたまはく、
 そこで大國主の命が
心憂く思つて仰せられたことは、
吾獨
何能
得作此國。
「吾獨して、
如何いかにかもよく
この國をえ作らむ。
「わたしはひとりでは
どのようにして
この國を作り得ましよう。
孰神與
吾能相作此國耶。
いづれの神とともに、
吾あはよくこの國を相作つくらむ」
とのりたまひき。
どの神樣と一緒に
わたしはこの國を作りましようか」
と仰せられました。
     
是時。 この時に この時に
有光海。 海を光てらして 海上を照らして
依來之神。 依り來る神あり。 寄つて來る神樣があります。
     
其神言。 その神の言のりたまはく、 その神の仰せられることには、
能治我前者。 「我あが前みまへをよく治めば、 「わたしに對してよくお祭をしたら、
吾能共與
相作成。
吾あれよくともどもに
相作り成さむ。
わたしが一緒になつて
國を作りましよう。
若不然者。 もし然あらずは、 そうしなければ
國難成。 國成り難がたけむ」
とのりたまひき。
國はできにくいでしよう」
と仰せられました。
     
爾大國主神
曰。
ここに大國主の神
まをしたまはく、
そこで大國主の命が
申されたことには、
然者
治奉之状奈何。
「然らば
治めまつらむ状さまはいかに」
とまをしたまひしかば
「それなら
どのようにしてお祭を致しましよう」
と申されましたら、
答言。 答へてのりたまはく、  
吾者。 「吾あをば 「わたしを
伊都岐奉于
倭之青垣
東山上。
倭やまとの青垣あをかきの
東の山の上へに
齋いつきまつれ」とのりたまひき。
大和の國の青々と取り圍んでいる
東の山の上に
お祭りなさい」と仰せられました。
     
此者
坐御諸山
上神也。
こは
御諸みもろの山の
上にます神なり。
これは
御諸みもろの山に
おいでになる神樣です。
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御諸山の神
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