紫式部集54 数ならぬ:原文対訳・逐語分析

53若竹の 紫式部集
第五部
転機

54数ならぬ
異本55
55心だに
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈

身を思はずなりと  わが身を思うにまかせない不遇だと  
嘆くことの、 嘆くことが、  
やうやう だんだんと  
なのめに、 常のことになり、  
ひたぶるのさまなるを 一途なありさまになっていくのを  
思ひける。 思った歌。  
     
数ならぬ 人数にも入らないような  
心に身をば わたしの心のままに身の境遇を  
まかせねど 合わせることはできないが  
身にしたがふは 身の境遇に従って変わるのは  
心なりけり 心なのであったわ  
     

参考異本=後世の二次資料

 「題不知  紫式部
かずならで心に身をばまかせねど身にしたがふは心なりけり」(陽明文庫本「千載集」雑中 一〇九六)