紫式部集52 消えぬ間の:原文対訳・逐語分析

51誰が里の 紫式部集
第五部
転機

52消えぬ間の
異本53
53若竹の
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
世の中の騒がしきころ、  世の中の騒然としていたころ、 【世の中の騒がしきころ】-長保二年(一〇〇〇)冬から三年にかけて疫病が流行した。夫宣孝は昨年の三年四月二十五日に亡くなった。「さはかし」は平安の仮名遣い。
朝顔を人のもとへやるとて、 朝顔を人のもとへ贈るとして、  
     
消えぬ間の 死なない間の  
身をも知る知る わが身を知りつつ  
朝顔の 朝顔のように 【朝顔】-歌語、はかない花の象徴。
露と争ふ はかない露と先を競う 【露】-歌語、はかなさの象徴。
世を嘆くかな 世を嘆くことよ  
     

参考異本=後世の二次資料

 「世の中つねならず侍りける比、槿の花を人のもとにつかはすとて  紫式部
きえぬまの身をもしるしるあさがほの露とあらそふ世を歎くかな」(吉田兼右筆本「玉葉集」雑四 二三九一)