紫式部集 第二部:近江・越前


詳解
定家本
和歌 人物
20 三尾の海に 網引く民の 手間もなく
 立ち居につけて 都恋しも
紫式部
21 磯隠れ 同じ心に 田鶴鳴く
 なに思ひ出づる 人や誰れそも
紫式部
22 かき曇り 夕立つ波の 荒ければ
 浮きたる舟ぞ しづ心なき
紫式部
23 知りぬらむ 行き来にならす 塩津山
 世にふる道は からきものぞと
紫式部
24 おいつ島 島守るや いさむらむ
 波も騒がぬ わらはべの浦
紫式部
25 ここにかく 日野の杉むら 埋む
 小塩に 今日やまがへる
紫式部
26 小塩山 の上葉に 今日やさは
 峯の薄 花と見ゆらむ
27 ふるさとに 帰る山路の それならば
 心やゆくと も見てまし
紫式部
28 春なれど 白根の深 いや積もり
 解くべきほどの いつとなきかな
紫式部