奥の細道 仙台・宮城野:原文対照

武隈の松 奥の細道
仙台・宮城野
壺の碑


『おくのほそ道』
素龍清書原本 校訂
『新釈奥の細道』
   名取川を渡つて仙台に入る。 名取川渡りて仙台に入る
  あやめ葺く日なり。 あやめふく日也
  旅宿を求めて四五日逗留す。 旅宿を求めて四五日逗留す
     
   ここに画工加衛門といふ者あり。 ここに畫工加右衞門といふものあり
  いささか心ある者と聞きて、知る人になる。 聊心あるものと聞て知る人に成る
  この者、年ごろ定かならぬ名所を 此者年頃さだかならぬ名跡を
  考へ置き侍ればとて、 考置き侍ればとて
  一日案内す。 一日案內す
     
  宮城野の萩茂り合ひて、 みやぎ野のはぎしげりあひて
  秋の気色思ひやらるる。 秋のけしきおもひやらるゝ
  玉田、横野、躑躅が岡はあせび咲くころなり。 玉田橫野のつゝじか岡はあぜひさく頃なり
  日影も漏らぬ松の林に入りて、 日影ももらぬ松の林に入て
  ここを木の下といふとぞ。 こゝを木の下といふとぞ
  昔もかく露深ければこそ、 むかしもかく露深けれはこそ
  「みさぶらひみかさ」とはよみたれ。 みさふらひみかさとはよみたれ
     
  薬師堂、天神の御社など拝みて、 藥師堂天神のみやしろなど拜みて
  その日は暮れぬ。 その日はくれぬ
     
   なほ、松島、塩竃の所々、画に書きて贈る。 猶松島鹽がまの所々畫にかきて送る
  かつ、紺の染め緒付けたる草鞋二足餞す。 かつ紺のそめ緖つけたるわらつ一足餞す
  さればこそ、風流のしれ者、 さればこそ風流のしれもの
  ここにいたりてその実を顕す。 こゝにいたりてその實をあらはす
     

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 あやめ草 足に結ばん 草鞋の緒  あやめ草 足に結ばん 草鞋の緖
     
   かの画図にまかせてたどりいけば、 かの畫づに任せてたどり行けば
  奥の細道の山際に、 おくの細道の山際に
    とふの菅あり今も年々
  十符の菅菰を調へて 十符のすげごもを調へて
  国守に献ずといへり。 國守に獻ずといへり
武隈の松 奥の細道
仙台・宮城野
壺の碑