古事記~剣の逆刺立 原文対訳

建御雷神 古事記
上巻 第四部
国譲りの物語
剣の逆刺立
天の逆手
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
是以
此二神。
ここを以ちて
この二神ふたはしらのかみ、
 そこで
このお二方の神が
降到出雲國
伊那佐之小濱而。
〈伊那佐三字以音〉
出雲の國の
伊耶佐いざさの
小濱をはまに降り到りて、
出雲の國の
イザサの
小濱おはまに降りついて、
拔十掬劔。 十掬とつかの劒を拔きて 長い劒を拔いて
逆刺立
于浪穗。
浪の穗に
逆に刺し立てて、
波の上に
逆樣に刺さし立てて、
趺坐
其劔前。
その劒の前さきに
趺あぐみ坐ゐて、
その劒のきつさきに
安座あぐらをかいて

其大國主神言。
その大國主の神に
問ひたまひしく、
大國主の命に
お尋ねになるには、
     
天照大御神。 「天照らす大御神 「天照らす大神、
高木神之命以。 高木の神の命もちて 高木の神の仰せ言で
問使之。 問の使せり。 問の使に來ました。
汝之宇志波祁流
〈此五字以音〉
葦原中國者。
汝なが領うしはける
葦原の中つ國に、
あなたの領している
葦原の中心の國は
我御子之
所知國。
我あが御子の
知らさむ國と
我が御子の
治むべき國であると
言依賜。 言よさしたまへり。 御命令がありました。
故汝心奈何。 かれ汝が心いかに」
と問ひたまひき。
あなたの心はどうですか」
とお尋ねになりましたから、
     
爾答白之。 ここに答へ白さく、 答えて申しますには
僕者不得白。 「僕あはえ白さじ。 「わたくしは何とも申しません。
我子
八重言代主神。
我が子
八重言代主やへことしろぬしの神
わたくしの子の
コトシロヌシの神が
是可白然。
爲鳥遊取魚而。
これ白すべし。然れども
鳥の遊漁あそびすなどりして、
御返事申し上ぐべきですが、
鳥や魚の獵をしに
往御大之前。 御大みほの前さきに往きて、 ミホの埼さきに行いつておつて
未還來。 いまだ還り來ず」
とまをしき。
まだ還つて參りません」
と申しました。
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剣の逆刺立
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