枕草子105段 殿上より梅のみな散りたる枝を

淑景舎 枕草子
上巻下
105段
殿上より
二月つごもり頃

(旧)大系:105段
新大系:101段、新編全集:101段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:109段
 


 
 殿上より、梅のみな散りたる枝を、「これはいかが」といひたるに、ただ、「はやく落ちにけり」といらへたれば、その詩を誦して、殿上人、黒戸にいとおほくゐたるを、上の御前に聞こしめして、「よろしき歌など詠みて出だしたらむよりは、かかることはまさりたり。かしこくいらへたり」と仰せられき。