紫式部集39 いづかたの:原文対訳・逐語分析

38花といはば 紫式部集
第四部
夫の死

39いづかたの
40雲の上も
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
遠き所へ行きにし人の  遠い所へ行った友人が 【遠き所へ行きにし人】-「筑紫へ行く人の女」(【六】)互いに「姉君」「中の君」と書き交した友人(【一五】)。実践本「とをし」は定家の仮名遣い。
亡くなりにけるを、 亡くなってしまったことを、  
親はらからなど帰り来て、 親や兄妹などが京に帰ってきて、  
悲しきこと言ひたるに、 悲しいことを言ったので、  
     
いづかたの どちらの  
雲路と聞かば 雲路へ行ったと聞いたなら、  
訪ねまし 訪ねもしましょうものを 【訪ねまし】-反実仮想の助動詞「まし」。
列離れけむ 一羽だけ列を離れて行った  
雁がゆくへを 雁の行方を 【ゆくへ】-「ゆくゑ」は定家の仮名遣い。
     

参考異本=後世の二次資料

*「とほきところにゆきける人のなくなりにけるを、おやはらからなど、みやこにかへりきて、かなしきこといひたるにつかはしける  紫式部
いづかたの雲ぢとしらばたづねましつらはなれけんかりの行へを」(陽明文庫本「千載集」哀傷 五六四)