紫式部集47 さ雄鹿の:原文対訳・逐語分析

46春の夜の 紫式部集
第四部
夫の死

47さ雄鹿の
48見し人の
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
同じ絵に、  同じ絵に、  
嵯峨野に花見る女車あり。 嵯峨野で花を見ている女車がある。  
なれたる童の、 もの慣れたる童女が、  
萩の花に立ち寄りて 萩の花の側に立ち寄って  
折りたるところ、 手折ったところ、 【折りたる】-実践本「おる」は定家の仮名遣い。
     
さ雄鹿の 雄鹿が  
しか慣らはせる いつもそのように慣らしている 【しか慣らはせる】-副詞「しか」は「鹿」を響かす。雄鹿が近付くと萩が慕い寄る、という構図。
萩なれや 萩なのでしょうか  
立ちよるからに 童女が近付くと同時に 【立ち寄るからに】-接続助詞「からに」、と同時に、や否や、の意。
おのれ折れ伏す 自然と萩が折れ伏すことよ 【おのれ】-「をのれ」は定家の仮名遣い。
【折れ付す】-「おる」は定家の仮名遣い。
     

参考異本=後世の二次資料

「屏風絵に花みる女車あり、わらはのたちよりて萩花をる所  紫式部
さをしかのしかならはせる萩なれやたちよるからにおのれをれふす」(吉田兼右筆本「玉葉集」秋上 四九五)