古事記 クソまき~原文対訳

誓約③ 古事記
上巻 第二部
天照の受難
スサノオのクソまき
天の岩戸
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
爾速須佐之男命。  ここに速須佐の男の命、  そこでスサノヲの命は、
白于天照大御神。 天照らす大御神に白したまひしく、 天照らす大神に申されるには
我心清明。 「我が心清明あかければ 「わたくしの心が清らかだつたので、
故我所生子。 我が生める子 わたくしの生うんだ子が
得手弱女。 手弱女たわやめを得つ。 女だつたのです。
因此言者。 これに因りて言はば、 これに依よつて言えば
自我勝云而
於勝佐備
〈此二字以音〉
おのづから我勝ちぬ」といひて、
勝さびに
當然わたくしが勝つたのです」といつて、
勝つた勢いに任せて
亂暴を働きました。
離天照大御神之
營田之阿
〈此阿字以音〉埋其溝。
天照らす大御神の
營田みつくたの畔あ離ち、
その溝埋うみ、
天照らす大神が田を作つておられた
その田の畔あぜを毀こわしたり
溝みぞを埋うめたりし、
亦其於聞看
大嘗之殿。
またその
大嘗にへ聞しめす殿に
また
食事をなさる御殿に
屎麻理〈此二字以音〉散。 屎くそまり散らしき。 屎くそをし散らしました。
     
故。雖然爲。 かれ然すれども、 このようなことを
なさいましたけれども
天照大御神者。 天照らす大御神は 天照らす大神は
登賀米受
而告。
咎めずて
告りたまはく、
お咎とがめにならないで、
仰せになるには、
如屎。 「屎くそなすは 「屎くそのようなのは
醉而
吐散登許曾。
〈此三字以音〉
醉ゑひて
吐き散らすとこそ
酒に醉つて
吐はき散ちらすとて
我那勢之命
爲如此。
我が汝兄なせの命
かくしつれ。
こんなになつたのでしよう。

離田之阿埋溝者。
また
田の畔あ離ち溝埋うむは、
それから
田の畔を毀し溝を埋めたのは
地矣阿多良斯登許曾。
〈自阿以下七字以音〉
地ところを惜あたらしとこそ 地面を惜しまれて
我那勢之命爲如此登。
〈此一字以音〉
我が汝兄なせの命かくしつれ」 このようになされたのです」
詔雖直。 と詔り直したまへども、 と善いようにと仰せられましたけれども、
猶其惡態
不止而轉。
なほその惡あらぶる態わざ
止まずてうたてあり。
その亂暴なしわざは
止やみませんでした。
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