古今和歌集 巻七 賀:歌の配置・コメント付

巻六:冬 古今和歌集
巻七
賀歌
巻八:離別
目次
    343
不知
344
不知
345
不知
346
不知
347
仁和
348
遍昭
349
業×
350
惟岳
351
興風
352
貫之
353
素性
354
素性
355
滋春
356
素性
357
素性
358
素性
359
素性
360
素性
361
素性
362
素性
363
素性
364
因香
 
 

※先頭が君が代原歌。
 それより目につくのは素性の多さ。悉く屏風にかけて出現。ここでは356以外の9首、293、802を加え、44首のうち11首が屏風。
 坊の袈裟と大袈裟な話と掛け屏風で吹くと解く。その心は吹いて回るが素性の習性。
 

 
 

巻七:賀

   
   0343
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 わか君は 千世にやちよに さされいしの
 いはほとなりて こけのむすまて
かな わかきみは ちよにやちよに さされいしの
 いはほとなりて こけのむすまて
コメ  ちよとやちよ(千夜と八千夜)のセットは、伊勢が初出(22段:秋の夜の千夜を一夜になずらへて 八千夜し寝ばや飽く時のあらむ)。
 万葉にこの組み合わせはない。つまり伊勢の著者の歌。歌の影響力からもこう見るのが自然。
 著者は「二条の后に仕うまつる男」(95段)の文屋。それが伊勢の主人公。
 
 伊勢は二条の后との恋愛話ではない。5~6段でそう説明されている。
 そういうのは物を知らん外野の噂。下卑た噂話と卑官の文屋の実力を認められない人達の貶めでそうなった。
 そうではなく二人で行ったお忍びのお見舞い話。男は后の付人というか子守番。
 したがって、349は業平の歌と認定されているが違う。伊勢が業平の歌集という見立てでそうされているが前提が誤り。
 業平の歌は全てそう。伊勢以外の歌が何一つない。つまり業平には何もない。
 
 上述で八千夜を出した伊勢22段は、大和の筒井の田舎の男女、著者の馴れ初め話。筒井筒の一つ前の話。
 筒井筒は幼馴染が結ばれる話。
 「むかし田舎わたらひしける人の子ども、井のもとに出でてあそびけるを、大人になりければ、男も女もはぢかはしてありけれど」
 この幼馴染の文脈読めませんか。あ失礼、読んでませんでしたか。
 男女の夜の関係を、オフィシャルな関係におきかえたのが千代に八千代。昔男は母親には千代を使っている(84段)。
 つまりキミを永遠におもってるというピロートークの枕詞を転用した。
 母親とはそこまで一緒にいたくない。気持ち悪いでしょうが。
 
 まして帝など永遠に思うわけない。純粋に気持ち悪いでしょ。だから続くイワオ(巌)を出している。
 というか永遠の忠誠を誓うようなことを歴代天皇は何かしました? 自力で。徳政や、天の信任を受けた神わざでも何か発揮されました?
 いや、そういう実績があるなら分かるよ。あ、カラスに導かれた? 神器がある? その神は何者? この状況でどうして加護があると思えるか。
 いやさ、世襲は人格的忠誠の根拠にはならないでしょ。というか二世でも色々足りない象徴なのに万世ならどうなるのよ。マ○セー! でしょ? 
 なぜ隣をバカにできるの。実績は関係ないんでしょ。あの神聖不可侵の統治行為の責任は民に負わせたんでしょ。そしてそれを継承したんでしょ。
 
 じゃあ責任をとらなければ。その意志を表明せねば。耐え難きを耐えさせた相応の。その償い。それが道理でないの。違うならもういいです。
 道義的責任と政治的責任は違うとかいう口先の馬鹿げた詭弁はいいです。規定には趣旨がある。特に憲法は統治に都合よく解釈しないように。
 そもそも政治にかかわる発言も一律禁止された君主など存在意義が全くない。ただの飾り。なぜ存在が許されたかその天意を考えなくてはならない。
 行為と権能と、それがない発言すらも区別できない。それはその根拠となる法を全く重んじていないからである。つまり法ではなく身分を重視する。
 つまりこの国は法の支配どころか法治国家ですらない。人の支配の国。人が法をどうとでも踏みにじる国。だから戦争ができる国などと言い出す。
 
 巌(いはほ)は、大きな岩。
 岩(Rock)は、古来(聖書=トーラーで)神を象徴する言葉である。その心は、周囲にたやすく流されない。盤石の意志(強い石)。不動の意志。
 上記の神は、帝などではない。それを名乗り、民に耐え難きを耐えさせたから人間宣言。それが摂理の作用。
 おかしな(危うい)意志にしがみ続けることでもない。そういうのは脆い。内実を理解できない。形だけ口先だけ。
 真っ当な(=全き=blame less)意志が求められることは当然の前提。
 
 下賎(金と権力)におもねらない、人の王道・人道を貫く意志。それが永遠の大道。そこからずれるほど命をそこなう。
 そこなっておいてそこまで大したことではないという。それが外道で非道、畜生道。
 
 苔のむすまでも、都合よく流されず強い意志をもたれよという、古事記以来の伝統的な天皇への箴言(石長姫)。
 
 このようにわが君主は、君主ならせめてすぐ流されない真っ当な意志をもたれたい、という糸しさと切なさと心弱さとの歌であり、帝マンセーというやかましいだけで思慮が皆無の亡国の癌である体制翼賛の歌では全くないので、一部の方はご安心下さい。だから千代なのである。
 
   
  0344
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 渡つ海の 浜のまさこを かそへつつ
 君かちとせの ありかすにせむ
かな わたつうみの はまのまさこを かそへつつ
 きみかちとせの ありかすにせむ
   
  0345
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 しほの山 さしてのいそに すむ千鳥
 きみかみ世をは やちよとそなく
かな しほのやま さしてのいそに すむちとり
 きみかみよをは やちよとそなく
   
  0346
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 わかよはひ 君かやちよに とりそへて
 ととめおきては 思ひいてにせよ
かな わかよはひ きみかやちよに とりそへて
 ととめおきては おもひいてにせよ
   
  0347
詞書 仁和の御時
僧正遍昭に七十賀たまひける時の御歌
作者 仁和帝(光孝)
原文 かくしつつ とにもかくにも なからへて
 君かやちよに あふよしもかな
かな かくしつつ とにもかくにも なからへて
 きみかやちよに あふよしもかな
   
  0348
詞書 仁和のみかとのみこにおはしましける時に、
御をはのやそちの賀に
しろかねをつゑにつくれりけるを見て、
かの御をはにかはりてよみける
作者 僧正へんせう(遍昭、良岑宗貞)
原文 ちはやふる 神やきりけむ つくからに
 ちとせの坂も こえぬへらなり
かな ちはやふる かみやきりけむ つくからに
 ちとせのさかも こえぬへらなり
   
  0349
詞書 ほりかはのおほいまうちきみの四十賀、
九条の家にてしける時によめる
作者 在原業平朝臣(※問題あり)
原文 さくら花 ちりかひくもれ おいらくの
 こむといふなる 道まかふかに
かな さくらはな ちりかひくもれ おいらくの
 こむといふなる みちまかふかに
コメ 出典:伊勢97段(四十の賀)。
「むかし、堀川のおほいまうちぎみと申すいまそかりけり。
四十の賀、九条の家にてせられける日、
『さくら花 散りかひ曇れ 老いらくの
 来むといふなる 道まがふがに』」
   
  0350
詞書 さたときのみこの
をはのよそちの賀を大井にてしける日よめる
作者 きのこれをか(※紀惟岳?情報不足)
原文 亀の尾の 山のいはねを とめておつる
 たきの白玉 千世のかすかも
かな かめのをの やまのいはねを とめておつる
 たきのしらたま ちよのかすかも
   
  0351
詞書 さたやすのみこのきさいの宮の
五十の賀たてまつりける御屏風に、
さくらの花のちるしたに
人の花見たるかたかけるをよめる
作者 ふちはらのおきかせ(藤原興風)
原文 いたつらに すくす月日は おもほえて
 花見てくらす 春そすくなき
かな いたつらに すくすつきひは おもほえて
 はなみてくらす はるそすくなき
   
  0352
詞書 もとやすのみこの七十の賀の
うしろの屏風によみてかきける
作者 きのつらゆき(紀貫之)
原文 春くれは やとにまつさく 梅花
 君かちとせの かさしとそ見る
かな はるくれは やとにまつさく うめのはな
 きみかちとせの かさしとそみる
   
  0353
詞書 もとやすのみこの七十の賀の
うしろの屏風によみてかきける
作者 そせい法し(素性法師)
原文 いにしへに ありきあらすは しらねとも
 ちとせのためし 君にはしめむ
かな いにしへに ありきあらすは しらねとも
 ちとせのためし きみにはしめむ
   
  0354
詞書 もとやすのみこの七十の賀の
うしろの屏風によみてかきける
作者 そせい法し(素性法師)
原文 ふしておもひ おきてかそふる よろつよは
 神そしるらむ わかきみのため
かな ふしておもひ おきてかそふる よろつよは
 かみそしるらむ わかきみのため
   
  0355
詞書 藤原三善か六十賀によみける/この歌は、ある人、
在原のときはるかともいふ
作者 在原しけはる(在原滋春)
(一説、在原ときはる)
原文 鶴亀も ちとせののちは しらなくに
 あかぬ心に まかせはててむ
かな つるかめも ちとせののちは しらなくに
 あかぬこころに まかせはててむ
   
  0356
詞書 よしみねのつねなりかよそちの賀に
むすめにかはりてよみ侍りける
作者 そせい法し(素性法師)
原文 よろつ世を 松にそ君を いはひつる
 ちとせのかけに すまむと思へは
かな よろつよを まつにそきみを いはひつる
 ちとせのかけに すまむとおもへは
   
  0357
詞書 内侍のかみの右大将ふちはらの朝臣の
四十賀しける時に、
四季のゑかける
うしろの屏風にかきたりけるうた
作者 そせい法し(素性法師)
原文 かすかのに わかなつみつつ よろつ世を
 いはふ心は 神そしるらむ
かな かすかのに わかなつみつつ よろつよを
 いはふこころは かみそしるらむ
   
  0358
詞書 内侍のかみの右大将ふちはらの朝臣の
四十賀しける時に、
四季のゑかける
うしろの屏風にかきたりけるうた
作者 そせい法し(素性法師)
原文 山たかみ くもゐに見ゆる さくら花
 心の行きて をらぬ日そなき
かな やまたかみ くもゐにみゆる さくらはな
 こころのゆきて をらぬひそなき
   
  0359
詞書 内侍のかみの右大将ふちはらの朝臣の
四十賀しける時に、
四季のゑかける
うしろの屏風にかきたりけるうた:夏
作者 そせい法し(素性法師)
原文 めつらしき こゑならなくに 郭公
 ここらの年を あかすもあるかな
かな めつらしき こゑならなくに ほとときす
 ここらのとしを あかすもあるかな
   
  0360
詞書 内侍のかみの右大将ふちはらの朝臣の
四十賀しける時に、
四季のゑかける
うしろの屏風にかきたりけるうた:秋
作者 そせい法し(素性法師)
原文 住の江の 松を秋風 吹くからに
 こゑうちそふる おきつ白浪
かな すみのえの まつをあきかせ ふくからに
 こゑうちそふる おきつしらなみ
   
  0361
詞書 内侍のかみの右大将ふちはらの朝臣の
四十賀しける時に、
四季のゑかける
うしろの屏風にかきたりけるうた:秋
作者 そせい法し(素性法師)
原文 千鳥なく さほの河きり たちぬらし
 山のこのはも 色まさりゆく
かな ちとりなく さほのかはきり たちぬらし
 やまのこのはも いろまさりゆく
   
  0362
詞書 内侍のかみの右大将ふちはらの朝臣の
四十賀しける時に、
四季のゑかける
うしろの屏風にかきたりけるうた:秋
作者 そせい法し(素性法師)
原文 秋くれと 色もかはらぬ ときは山
 よそのもみちを 風そかしける
かな あきくれと いろもかはらぬ ときはやま
 よそのもみちを かせそかしける
   
  0363
詞書 内侍のかみの右大将ふちはらの朝臣の
四十賀しける時に、
四季のゑかける
うしろの屏風にかきたりけるうた:冬
作者 そせい法し(素性法師)
原文 白雪の ふりしく時は みよしのの
 山した風に 花そちりける
かな しらゆきの ふりしくときは みよしのの
 やましたかせに はなそちりける
   
  0364
詞書 春宮の むまれたまへりける時に
まゐりてよめる
作者 典侍藤原よるかの朝臣(藤原因香)
原文 峰たかき かすかの山に いつる日は
 くもる時なく てらすへらなり
かな みねたかき かすかのやまに いつるひは
 くもるときなく てらすへらなり