紫式部集13 ほととぎす:原文対訳・逐語分析

12行かずとも 紫式部集
第一部
若かりし頃

13ほととぎす
14祓へどの
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
賀茂に詣うでたるに、  上賀茂神社に参詣した時に、 【賀茂】-下に「片岡」が出てくるので、上賀茂神社のこと。
「ほととぎす鳴かなむ」 「ほととぎすが鳴いてほしい」 【鳴かなむ】-終助詞「なむ」願望を表す。鳴いてほしい。
と言ふあけぼのに、 という明け方に、  
片岡の木末 片岡の森の木末が 【片岡】-「片岡の森」山城国の歌枕。上賀茂神社の近辺の森。ほととぎすの名所。
をかしく見えけり。 趣き深く見えたことであった。  
     
ほととぎす ほととぎすの 【をかしく】-実践本「おかし」は定家の仮名遣い。
声待つほどは 鳴く声を待つ間は、  
片岡の 片岡の  
森の雫に 森の雫に  
立ちや濡れまし 車の外に立って、濡れましょうかしら 【立ちや濡れまし】-牛車の外に出て、雫に濡れる。
係助詞「や」、仮想の助動詞「まし」連体形、係結び。
     

参考異本=後世の二次資料

「賀茂にまうでて侍りけるに、人の、郭公なかなんと申しけるあけぼの、かたをかのこずゑをかしく見え侍りければ 紫式部
郭公こゑまつほどはかたをかのもりのしづくにたちやぬれまし」(寿本「新古今集」夏 一九一)