紫式部集38 花といはば:原文対訳・逐語分析

37桃といふ 紫式部集
第四部
夫の死

38花といはば
39いづかたの
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
花の散るころ、  桜の花の散るころ、 【花の散るころ】-桜の花。
梨の花といふも、 梨の花といっても、  
桜も夕暮れの 桜も夕暮れ時の  
風の騒ぎに、 風の騒ぎで、 【風の騒ぎ】-「さはき」は平安の仮名遣い。
いづれと見えぬ色なるを、 どちらとも見分けられない色なので、  
     
花といはば 花といったら 【花といはば】-ハ行四段動詞「いは」未然形+接続助詞「ば」順接の仮定条件。
いづれか匂ひ 桜と梨とどちらが〈匂い〉色つや  
なしと見む ないと見ようか 〈梨で匂いなし〉
散り交ふ色の 散りかう色は  
異ならなくに どちらも違わないのだから 【異ならなくに】-「異なら」未然形+打消の助動詞「な」未然形+準体助詞「く」+格助詞「に」、異ならないのに。
     

参考異本=後世の二次資料

「なしの花のさくらとともにちりけるをみてよめる  紫式部
花といはばいづれか匂ひなしとみむ散りかふ色のことならなくに」(吉田兼右筆本「続後拾遺集」物名 五〇三)