古事記 曙立王(アケタツ王)~原文対訳

出雲の祟り 古事記
中巻④
11代 垂仁天皇
ホムチワケの物語
④曙立王
不具=ホムヂ
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
故其御子令
拜其大神宮。
將遣之時。
かれその御子を、
その大神の宮を
拜をろがましめに
遣したまはむとする時に、
依つてその御子をして
その大神の宮を拜ましめに
お遣りになろうとする時に、
令副誰人者吉。 誰を副たぐへしめば
吉えけむとうらなふに、
誰を副えたら
よかろうかと占いましたら、
爾曙立王
食ト。
ここに曙立あけたつの王
卜うらに食あへり。
アケタツの王が
占いに合いました。
     

宇氣比=請負

     
故科
曙立王。
かれ曙立あけたつの王に
科おほせて、
依つてアケタツの王に
仰せて
令宇氣比
白。
うけひ
白さしむらく、
誓言を
申さしめなさいました。
〈宇氣比三字以音〉    
     
因拜此大神。
誠有驗者。
「この大神を拜むによりて、
誠まことに驗しるしあらば、
「この大神を拜むことによつて
誠にその驗があるならば、
住是鷺巣
池之樹鷺乎。
宇氣比落。
この鷺さぎの巣すの
池の樹に住める鷺を、
うけひ落ちよ」と、
この鷺の巣の
池の樹に住んでいる鷺が
我が誓によつて落ちよ」
如此詔之時。 かく詔りたまふ時に、 かように仰せられた時に
宇氣比
其鷺墮地死。
うけひて
その鷺地つちに墮ちて死にき。
その鷺が池に落ちて死にました。
     
又詔之
宇氣比活(爾)者。
また「うけひ活け」と詔りたまひき。
ここにうけひしかば、
また「活きよ」と
誓をお立てになりましたら
更活。 更に活きぬ。 活きました。
     
又在甜白檮
之前
また甜白檮あまがしの
前さきなる
またアマカシの
埼さきの
葉廣熊白檮。 葉廣熊白檮
はびろくまがしを
廣葉のりつぱなカシの木を
令宇氣比枯。
亦令宇氣比生。
うけひ枯らし、
またうけひ生かしめき。
誓を立てて枯らしたり
活かしたりしました。
     
爾名賜。
其曙立王。
謂倭者
師木登美
豐朝倉
曙立王。
ここに
その曙立あけたつの王に、
倭やまとは
師木しきの登美とみの
豐朝倉とよあさくらの
曙立あけたつの王といふ名を賜ひき。
それでアケタツの王に、
「大和は師木しき、
登美とみの
豐朝倉とよあさくらの
アケタツの王」
という名前を下さいました。
〈登美二字以音〉    
出雲の祟り 古事記
中巻④
11代 垂仁天皇
ホムチワケの物語
④曙立王
不具=ホムヂ