枕草子202段 五月の長雨の頃

心にくき 枕草子
中巻下
202段
五月の長雨
ことにきらきら

(旧)大系:202段
新大系:189段、新編全集:190段末三段目
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後最も索引性に優れる三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:ナシ
 


 
 五月の長雨の頃、上の御局の小戸の簾に、斉信の中将の寄りゐ給へりし香は、まことにをかしうもありしかな。その物の香ともおぼえず、おほかた雨にもしめりて、艶なるけしきの、めづらしげなきことなれど、いかでかいはではあらむ。またの日まで、御簾にしみかへりたりしを、わかき人などの世に知らず思へる、ことわりなりや。
 
 

心にくき 枕草子
中巻下
202段
五月の長雨
ことにきらきら