紫式部集59 み吉野は:原文対訳・逐語分析

58深山辺の 紫式部集
第六部
初々し出仕

59み吉野は
異本94
60憂きことを
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
正月十日のほどに、  正月十日のころに、 【正月十日のほどに】-寛弘三年(一〇〇六)正月十日。
「春の歌たてまつれ」 「春の歌を奉るように」  
とありければ、 とあったので、  
まだ出で立ちもせぬ まだ出仕もしてない  
隠れがにて、 実家で、  
     
み吉野は み吉野は  
春のけしきに 春の景色に  
霞めども 霞んでいるけれども  
結ぼほれたる 依然としてかじかんでいる  
雪の下草 雪の下草です 【雪の下草】-作者自身を譬喩する。
     

参考異本=後世の二次資料

 *「一条院御時殿上人はるのうたとてこひはべりければよめる  紫式部
みよしのははるのけしきにかすめどもむすぼほれたるゆきのしたくさ」(書陵部本「後拾遺集」春上 一〇)
*「み吉野は春の気色に霞めども結ぼほれたる雪の下草  紫式部」(梅沢記念館旧蔵本「新撰朗詠集」早春 一二)
*「みよしのは春のけしきにかすめどもむすぼほれたる雪の下草」(書陵部本「時代不同歌合」一一〇)
*「みよし野は春のけしきにかすめどもむすぼほれたる雪の下草」(群諸類従本「後六々撰」一一九)
*「み吉野は春のけしきに霞めども掬ぼほれたる雪の下草」(穂久邇文庫本「古来風体抄」三九九)
*「みよし野は春のけしきにかすめどもむすぼほれたる雪のした草」(「女房三十六人歌合」六一)
*「一条院御時、殿上人春歌とこひ侍りける  紫式部
みよしのは春のけしきにかすめどもむすぼほれたる雪の下草」(「定家八代抄」一二)
*「後拾遺  紫式部
み吉野は春の気色にかすめどもむすぼほれたる雪の下草」(書陵部本「八代集秀逸」三一)
*「みよしのは春のけしきにかすめどもむすぼほれたる雪のした草」(「五代集歌枕」七〇三)