徒然草31段:雪のおもしろう降りたりしあした 完全対訳解説

人の亡きあと 徒然草
第一部
31段
雪のおもしろ
九月二十日

 

原文 現代語訳 解釈のポイント
 雪の
おもしろう
降りたりし
あした、
 雪が
一面に白く趣深く
降った
朝、
●おもしろ(面白):ここでは①興があるに②一面に白いを掛ける(独自)
ENG: interest(面白), interpret;面(surface,face)+白(white)=😁
①興がある(興味がある)は暇つぶし(inter-rest)になること。余興。
人のがり、
いふべきこと
ありて、
人のもとへ、
言うべきことが
あって、
 
     
文をやる
とて、
雪のこと
何とも
いはざりし
返りごとに、
手紙を遣る
と言って、
雪のことは
何とも
言わなかった
返事に、
・とて
     
「この雪
いかが見ると、
一筆
宣はせぬ
ほどの、
ひがひがし
からん人の
仰せらるる
こと、
「この雪を
どう見るかと、
一言も
仰られない
ほどに、
ひねくれ
たような人が
のたまわれる
ことは、
〇ひがひがし:ひがみ(僻み)癖があり(独自)、ひねくれ過ぎている。
 無風流・風流を解さないとする説は語義から離れた拡大解釈・循環論法で不適当。大真面目な人は古文肝心の面白をかしを解せない。そもそも無風流は日本語としておかしい。ひが東解釈。
聞き入る
べきかは。
額面通り
聞き入れるべき
でしょうか。
〇聞き入る:この反対解釈で兼好の「いふべきこと」は相手に言わねばならない下の立場でのやむにやまれぬ頼み事。遁世人なので生活資金というのが第一。相手が敬語を用いているのは作家を先生というようなもので、一般の上下従属と異なる先進的関係性がある。つまり兼好のパトロン(独自)。
かへす
がへす
口惜しき
御心なり」
返す
返すも
残念な
お心です」
●口惜し:残念!惜しいな~(あと少し足りない、もう一声)という口語。
情けないとする説は、所詮他人事で上下関係に慣れ切った学者の拡大解釈に基づく定義で不適当。

いはれたり
しこそ、
をかしかり
しか。

言われた
ことこそ、
面白かった
ものだ。
●をかし:おもしろと対をなし、ここでは相手の返事自体「ひがひがし」という面白おかしさ(独自)。普通なら「歌一首でもつけたら聞き入れんでもない」。理想は余分に多く包んで来る。まだ見ていない歌の分として。ここもそう見る。
・しか
    いつもの手紙を送ったら上の内容が返って来たと考えて欲しい。「をかし」で兼好が怒ってからかったという文脈は作品中にない上に、色々幼稚。
 今は
なき人
なれば、
かばかりの
ことも
忘れがたし。
 今は
亡き人
なので、
これだけの
ことも
忘れがたい。
〇今は亡き人:これは前段の人の亡きあとの人と解する(独自)。理解あればワルトシュタインの様に歴史に名が残る。時期的に1313に確認される兼好遁世から3年後の1316に没した堀川具守(兼好は天皇の外祖父となった具守の家司で、その縁で宮中に入ったとされる。つまりただの家来ではない)。