♪♪♀おなじ内侍
♪♪×在中将(著者誤認定。染殿との対比で縫殿で二条の后に仕えた文屋の物語が、業平で上書きされた(独自)。伊勢物語にはない貴重なエピソード)
おなじ内侍に、
在中将すみける時、中将のもとによみてやりける。
♪266
秋萩を 色どる風の 吹きぬれば
人の心も うたがはれけり
とありければ、
♪267
秋の野を 色どる風は 吹きぬとも
心はかれじ 草葉ならねば
となむいへりける。
かくてすまずなりてのち、
中将のもとより、衣をなむ、しにおこせたりける。
それに、
「あらはひなどする人なくて、いとわびしくなむある。
なほかならずして給へ」
となむありければ、
内侍、
「御心もてあることにこそはあなれ。
♪268
大幣に なりぬ人の 悲しきは
よるせともなく しかぞなくなる
」となむ、いひやりける。
中将、
♪269
なかるとも なにとか見えむ 手にとりて
ひきけむ人ぞ 幣と知るらむ
となむいひける。