原文 |
書き下し 漢文叢書 |
現代語訳 下村湖人 要検討 |
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棘子成 曰 |
棘子成きよくしせい 曰いはく、 |
衛の大夫 棘子成きょくしせいが いった。 |
君子 質 而已矣 |
君子くんしは 質しつのみ、 |
「君子は 精神的、本質的にすぐれておれば、それでいいので、 |
何 以文爲 |
何なんぞ 文ぶんを以もつて為せん。 |
外面的、形式的な磨き などは、どうでもいいことだ。」 |
子貢 曰 |
子貢しこう 曰いはく、 |
すると子貢が いった。 |
惜乎 | 惜をしいかな | 「あなたの君子論には、遺憾ながら、ご同意出来ません。 |
夫子之說 君子也 |
夫子ふうしの 君子くんしを説とくや、 |
あなたのような地位の方が、そういうことを仰しゃっては、 |
駟不及舌 | 駟しも舌したに及およばず、 | 取りかえしがつかないことになりますから、ご注意をお願いいたします。 |
文猶 質也 |
文ぶんは猶なほ 質しつの如ごときなり、 |
いったい本質と外形とは決して別々のものではなく、 外形はやがて本質であり、 |
質猶 文也 |
質しつは猶なほ 文ぶんの如ごときなり。 |
本質はやがて 外形なのであります。 |
虎豹 之鞹 |
虎豹こへうの 鞹くわくは |
早い話が、虎や豹の皮が虎や豹の皮として価値あるためには、 その美しい毛がなければならないのでありまして、 |
猶 犬羊 之鞹 |
猶なほ 犬羊けんやうの 鞹くわくのごとし。 |
もしその毛をぬき去って皮だけにしましたら、 犬や羊の皮とほとんどえらぶところはありますまい。 |
君子もその通りであります。」 |