論語12-7 子貢 問政~民信無くば立たず:原文対訳

論語
顔淵第十二
7
民無信不立
虎豹犬羊
原文 書き下し
漢文叢書
現代語訳
下村湖人+【独自】
要検討
子貢
問政
子貢しこう
政まつりごとを問とふ。
 子貢が
政治の要諦についてたずねた。
     
子曰 子曰く、 先師はこたえられた。
足食 食しよくを足たし 【食をみたし、
足兵 兵へいを足たし、 兵をみたし

信之矣
民たみは
之これに信しんにす。
民が
これを信じること。】
    ××「食糧をゆたかにして国庫の充実をはかること、
軍備を完成すること、
国民をして政治を信頼せしめること、
この三つであろう。」
    【※下村湖人は戦前旧制高校校長だったことに留意。
兵は民の用役と同義で、その用は民の信に足る用。
信頼せしめるなら、用を誤魔化しているという常。
上記語順と以下の文脈でも軍備限定は不適当。
先軍政を強調するのも貧国悪政の象徴で不適当】
     
子貢
子貢しこう
曰いはく、
 子貢が
更にたずねた。

不得已而
必かならず
已やむを得えずして
去さらば、
「その三つのうち、
やむなくいずれか一つを
断念しなければならないとしますと、
於斯三者
何先
斯この三者さんしやに於おいて
何なにをか先さきんぜん。
先ずどれを
やめたらよろしうございましょうか。」
曰いはく、  先師
去兵 兵へいを去さらん。 「むろん軍備だ。」
     
子貢
子貢しこう
曰いはく、
 子貢がさらにたずねた。

不得已而
必かならず
已やむを得えずして
去さらば、
 
於斯二者
何先
斯この二者にしやに於おいて
何なにをか先さきんぜん。
「あとの二つのうち、
やむなくその一つを
断念しなければならないとしますと?」
曰いはく、  先師
去食 食しよくを去さらん。 「食糧だ。
     
自古
皆有死
古いにしへより
皆みな死し有あり、
【古来より
みな死がある。

無信
不立
民たみ×
信しん無なくんば
立たたず。
(国の政体・国体も)
民の
信頼がない(口先だけの悪政)なら
存立しない(死に体で命運尽きる)。】
     
    ※ここでの主語は冒頭の政で、民ではなく、
政治は民の信頼(民心)なければ成り立たないということ。
  参考:國譯漢文大成/
民たみ
信しんなくんば
立たたず
×国庫が窮乏しては為政者が困るだろうが、
昔から人間は早晩死ぬものときまっている。
信がなくては、政治の根本が立たないのだから。」
    ※下村訳は民を消去して論理も不自然で不適当。
民の生死を行政判断にかからしめるのは
道義的にも罪(人道に対する罪)。

 
政は正なり12-17:政者正也)という章もあるように、「信」は心・芯(字形注意)に掛け、立たないとしている(独自)。

 それが曲がっていると、信じさせる(信頼せしめる)必要が出てくる。しかし時代によっては、上記訳のように「食を足す」とあれば国庫を充実させることだと解釈する人が社会上層にいたことを教訓にしたい。今なおそう思われているフシがあるが、最早不治の病】
 

論語
顔淵第十二
7
民無信不立
虎豹犬羊