原文 |
書き下し 漢文叢書 |
現代語訳 下村湖人 要検討 |
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師冕 見 |
師し冕べん 見まみゆ、 |
めくらの音楽師の冕べんが たずねて来た。 |
及階 | 階かいに及およぶ。 | 階段のところまで来ると、 |
子曰 | 子曰く、 | 先師はいわれた。 |
階也 | 階かいなり。 | 「階段だよ。」 |
及席 | 席せきに及およぶ。 |
やがて冕べんが 座席の近くまで来ると、 |
子曰 | 子曰く、 | 先師はいわれた。 |
席也 | 席せきなり。 | 「さあ、ここにおかけなさい。」 |
皆坐 | 皆みな坐ざす。 | みんなが座席につくと、 |
子 吿之曰 |
子し 之これに告つげて曰く、 |
先師は、 |
某在斯 | 某ぼうは斯こゝに在あり、 | 誰はここ、 |
某在斯 | 某は斯に在り。 |
誰はそこ、と いうふうに、 一々みんなの坐っている場所を 冕べんに告げられた。 |
師冕出 | 師し冕べん出いづ。 | 【師の】冕べんが帰ったあとで |
子張 問曰 |
子張しちやう 問とうて曰いはく、 |
子張が たずねた。 |
與 師言之道 與 |
師しと言いふの道みちか。 |
「あんなふうに、一々こまかにおっしゃるのが 音楽師に対する作法でしょうか。」 |
子曰 | 子曰く、 | 先師がこたえられた。 |
然 | 然しかり、 | 「そうだ。 |
固 相師之道也 |
固もとより 師しを相たすくるの道みちなり。 |
【言うまでもなく、これが本来の 師を助けその脇を固める道である。】 |
××相手はめくらなのだから、 むろんあのぐらいなことはいってやらなければ。」 |
【「固相師之道」とは、「固」に「もとより」と「固める」意味を掛け、師の脇を固める(固相=補佐する)道ということを、字義に即し(=もとより)象徴的に表現した頓知と解する。
下村訳では侮蔑的表現が続くが、訳者は戦前に生きた旧制高校校長ということに一応留意。
解釈は自分達目線・自分達本位でするものではなく筆者の文脈によらなければならない。それが理解するということでもある。
理とは、自分達の共通認識ではなく人の認識を超えてあること・決まり。解は解釈。
分解しても大意は理解できない。それが群盲象を評すの例え。その「象」は象徴・総体の象徴表現(elephant and element)。これが理の一例。
以上独自】