論語15-25 子曰 吾猶及史之闕文也有馬者借人乗之:原文対訳

三代之直道 論語
衛霊公第十五
25
史之闕文
巧言乱徳
原文 書き下し
漢文叢書
現代語訳
下村湖人
要検討
子曰 子曰く、  先師がいわれた。
    「私の子供のころには、
まだ人間が正直で、いいことが行われていた。
たとえば、
吾猶

史之闕文
吾われ猶なほ
史しの闕文けつぶんに
及およぶ、
史官が疑わしい点があると、
調査研究がすむまでは、
そこを空白にしておくとか、
有馬者 馬うま有ある者ものは、 馬の所有者は
借人乘之 人ひとに借かして之これに乗のらしむ、 気持よく人に貸して乗らせるとかいうことだ。ところが、
今亡矣夫 今いまは亡なきかな。 今はそういうことがまるでなくなってしまった。」

  

下村湖人による注釈

 
 ○ この章の原文は、極めて難解で、ほとんど意味が通らない。古来の通説に従つて、いろいろ言葉を補つて一応訳しては見たが、その通説が果して正しいかどうか疑問である。「吾猶及」の三字を「私の幼時にはこんなことを聞いたこともある」と解するのに第一無理があるし、「史之闕文」と「有馬者云々」とを並べるのも変である。一説には、「闕文」は本章の文章に闕文があつたので、誰かがその二字を書いておいたのが、いつの間にか本文になつてしまつたといわれている。あるいはそれが最も真実に近いかも知れぬ。もしそうだとすれば、本章は意義不明として訳などしない方が賢明であろう。