原文 |
書き下し 漢文叢書 |
現代語訳 下村湖人 要検討 |
---|---|---|
曾子有疾 | 曾子そうし疾やまひ有あり、 | 曾先生が病気の時に、 |
召門弟子 | 門弟もんてい子しを召めして、 | 門人たちを枕頭に呼んで |
曰 | 曰く、 | いわれた。 |
啟予足 | 予よが足あしを啓ひらけ、 | 「私の足を【見よ】出して見るがいい。 |
啟予手 | 予よが手てを啓ひらけ。 | 私の手を【見よ】出して見るがいい。 |
詩云 | 詩しに云ふ、 | 詩経に、 |
『戰戰兢兢 | 戦戦せんせん兢兢きようきよう、 | 【戦々恐々、 |
如臨深淵 | 深淵しんゑんに臨のぞむが如ごとく、 | 深淵に臨むがごとく、 |
如履薄冰』 | 薄冰はくひようを履ふむが如ごとしと。 | 薄氷を踏むがごとく、とあるが、 |
而今而後 | 而今じこん而後じご、 | 今より後、 |
吾知免夫 | 吾われ【それ】免まぬかるゝを知るかな | 私はその恐れを免れよう。 |
小子 | 小子せうし。 |
おまえたちも。 (私の死で恐れることを免れよう)】 |
×深渕ふかぶちにのぞむごと、 おののくこころ。 うす氷ふむがごと、 つつしむこころ。 とあるが、もう私も安心だ。 永い間、おそれつつしんで、この身をけがさないように、 どうやら護りおおせて来たが、 これで死ねば、もうその心労もなくなるだろう。 ありがたいことだ。 そうではないかね、みんな。」 |
※夫:「かの」「それ」という指示語と「かな」という感嘆の掛詞と解する(独自)。