論語8-10 子曰 好勇疾貧乱也:原文対訳・解説

民可使由之 論語
泰伯第八
10
周公之才
原文 書き下し
漢文叢書
現代語訳
独自
子曰 子曰く、  孔子曰く、
好勇
疾貧
勇ゆうを好このみて
貧ひんを疾にくむは
勇を好み
貧を憎む、
亂也 乱らんなり、 これが乱である。
人而
不仁
人として
不仁ふじんなる、
人として
不誠実な
疾之
已甚
之これを疾にくむ
已甚はなはだしきは
人を憎むこと
甚だしい。
亂也 乱らんなり。 これが乱である。

 

※これは憎むのが良くないという意味ではなく(17-24:子貢しこう曰く、君子くんしも亦また悪にくむこと有あるか。子曰く、悪にくむこと有あり)、前段と後段と対比し、勇ではなく仁を好むことを求め、そういう為政・徳政を支持し(2-1:子曰爲政以德)、口先で民を貧困にする増税パーティーを退け貧をなくすべきであるという趣旨。

 勇はやむ得えずなすもので、好むものではない(2-24:義ぎを見て為せざるは勇ゆう無きなり)。

 このやむ得ないの「やむ」が疾と已に掛かる。それが「疾之已」。一般の訳は、「已甚」に、はな・はだを当てるが、「已」には、やむの他、はなはだの意味があり二重表現であるから、已は「やむ」と「はなはだ」の前後に掛かり強調しているという根拠がある。

 乱は已む得なくない、裏返せば、未然に防げる(已然と未然は対)。それは仁を好む徳政によるべきで、乱と同列の鎮圧によるべきではない(以上独自説)。

以下、下村湖人の訳で、方向は良いとしても、解釈は文言と論語の文脈に忠実にする必要がある。

 先師がいわれた。「社会秩序の破壊は、勇を好んで貧に苦しむ者によってひき起されがちなものである。
 しかしまた、道にはずれた人を憎み過ぎることによってひき起されることも、忘れてはならない。」

民可使由之 論語
泰伯第八
10
周公之才