原文 |
書き下し 漢文叢書 |
現代語訳 下村湖人 要検討 |
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柳下惠 爲士師 |
柳下恵りうかけい 士師ししと為なり、 |
柳下恵が 法官となつて |
三黜 | 三みたび黜しりぞけらる。 | 三たびその職を免ぜられた。 |
人曰 | 人ひと曰いはく、 | ある人が彼にいった。 |
子 未可以去乎 |
子し 以もつて去さる可べからざるか。 |
「どうしてこんな国にぐずぐずしておいでです。 さっさとお去りになったらいいでしょうのに。」 |
曰 | 曰いはく、 | 柳下恵がこたえた。 |
直道而 事人 |
道みちを直なほくして 人ひとに事つかへば、 |
「どこの国に行ったところで、 正道をふんでご奉公をしようとすれば、 |
焉往而 不三黜 |
焉いづくに往ゆくとして 三黜さんちゆつせられざらん、 |
三度ぐらいの免職は覚悟しなければなりますまい。 |
枉道而 事人 |
道みちを枉まげて 人ひとに事つかへば、 |
免職がおそろしさに正道をまげて ご奉公するぐらいなら、 |
何必 去父母之邦 |
何なんぞ必かならずしも 父母ふぼの邦くにを去さらん。 |
何も父母の国をすてて、 わざわざ他国に行く必要もなかろうではありませんか。」 |
○ 柳下恵=參照三九二章【15-13】註。
○ 本章には孔子の評語がないが、これには、評語が落ちたのだろうという説と、柳下恵のいうことが義理明白で評語の必要がなかつたのだろうという説と、両説がある。