原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
---|---|---|
絵に、 | 絵に、 | |
梅の花見るとて、 | 梅の花を見ようとして、 | |
女、妻戸押し開けて、 | 女が妻戸を押し開けて、 | 【押し開けて】-実践本「をす」は定家の仮名遣い。 |
二三人ゐたるに、 | 二三人座っているが、 | |
みな人びと寝たるけしき | 他の人々は皆寝ている様子を | |
描いたるに、 | 描いている中に、 | |
いとさだ過ぎたるおもとの、 | たいそう年取った身分ある女房が、 | 【いとさだ過ぎたるおもと】-単に年取った女房の意でなく、身分の高い女房。 |
つらづゑついて | 頬杖をついて | |
眺めたるかたあるところ、 | もの思いに耽っている姿が描いてあるところ、 | |
春の夜の | 春の夜の | |
闇の惑ひに | 闇に〈惑って〉 | |
色ならぬ | 梅の花の色は見えないが | 【色ならぬ】-若さはないが、の意味が込められている。 |
心に花の | 心のうちに花の | |
香をぞ染めつる | 香を染めたことである | |