原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
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遠き所へ行きにし人の | 遠い所へ行った友人が | 【遠き所へ行きにし人】-「筑紫へ行く人の女」(【六】)互いに「姉君」「中の君」と書き交した友人(【一五】)。実践本「とをし」は定家の仮名遣い。 |
亡くなりにけるを、 | 亡くなってしまったことを、 | |
親はらからなど帰り来て、 | 親や兄妹などが京に帰ってきて、 | |
悲しきこと言ひたるに、 | 悲しいことを言ったので、 | |
いづかたの | どちらの | |
雲路と聞かば | 雲路へ行ったと聞いたなら、 | |
訪ねまし | 訪ねもしましょうものを | 【訪ねまし】-反実仮想の助動詞「まし」。 |
列離れけむ | 一羽だけ列を離れて行った | |
雁がゆくへを | 雁の行方を | 【ゆくへ】-「ゆくゑ」は定家の仮名遣い。 |
*「とほきところにゆきける人のなくなりにけるを、おやはらからなど、みやこにかへりきて、かなしきこといひたるにつかはしける 紫式部
いづかたの雲ぢとしらばたづねましつらはなれけんかりの行へを」(陽明文庫本「千載集」哀傷 五六四)