原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
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かばかり | これほど | |
思ひ屈しぬべき身を、 | ふさぎこんでしまいそうなわが身を、 | 【思ひ屈しぬべき】-底本「う」をミセケチにして「そ」と訂正する。訂正以前本文「思ひ鬱ず」。古本系の陽明文庫本「思ひくし」(思ひ屈す)とある。今、陽明文庫本に従う。 |
「いといたうも | 「とてもひどく | |
上衆めくかな」 | 上臈ぶっていらっしゃるわ」 | |
と言ひける人を聞きて、 | と言った人がいるとを聞いて、 | |
わりなしや | しかたないことだわ、 | |
人こそ人と | あの人たちはわたしを一人前の人と | 【人こそ人と】-前の「人」は他の女房たち、後の「人」は自分、一人前の人の意。係助詞「こそ」--「言はざらめ」已然形、係結びの法則、逆接用法。 |
言はざらめ | 思わないでしょうが | |
みづから身をや | 自分自身からわが身を | 【身をや】-係助詞「や」--推量の助動詞「べき」連体形、係結びの法則、反語表現。 |
思ひ捨つべき | 見捨てることができましょうか | |
「述懐のこころを 紫式部
わりなしや人こそひとといはざらめみづから身をやおもひすつべき」(尊経閣文庫「続古今集」雑中 一六九九)