原文 実践女子大本 (定家本系筆頭) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
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わづらふことあるころなりけり。 | 病気をしているころのことであった。 | |
「貝沼の池といふ所なむある」と、 | 「貝沼の池という所がある」と、 | 【貝沼の池】-陸奥国にある池。 |
人のあやしき歌語りするを聞きて、 | 人の不思議な歌語りをするのを聞いて、 | 【歌語り】-歌にまつわる話。 |
「心みに詠まむ」と言ふ。 | 「試みに歌を詠もう」と言う歌。 | |
世にふるに | 世の中に生きているなかでどうして貝沼ではないが、 | |
なぞ貝沼の | 【貝沼】-「貝沼」と「甲斐」の掛詞。 | |
いけらじと | 生きる甲斐がないと | 【いけらじ】-「池」と「生け」の掛詞。 |
思ひぞ沈む | 思い沈むことだ、 | |
底は知らねど | どこそこと池の底は知らないけれど | 【底】-「底」と「其処」の掛詞。 |