原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
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年返りて、 | 年が明けて、 | 【年返りて】-夫宣孝が亡くなった翌年、長保四年(一〇〇二)。 |
「門は開きぬや」と言ひたるに、 | 「門は開きましたか」と言ってきたので、 | 【門は開きぬや】-喪は明けましたか、の意を含む。 |
誰が里の | どなたの | |
春の便りに | 春の里を訪れたついでに、 | |
鴬の | 鴬は | 【鴬の】-「門は開きぬや」と言った男を喩える。 |
霞に閉づる | 霞に閉ざされた | |
宿を訪ふらむ | わたしの宿を訪ねるのでしょうか | 【宿を訪ふらむ】-推量の助動詞「らむ」(連体形、視界外推量)は「誰が」と呼応して、疑問。 |
「十二月ばかりに、かどをたたきかねてなんかへりにしとうらみたりけるをとこ、としかへりてかどはあきぬらんやといひて侍りければ、つかはしける 上東門院紫式部
たがさとの春のたよりにうぐひすの霞にとづるやどをとふらむ」(陽明文庫本「千載集」雑上 九六二)