原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
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塩津山といふ道の | 塩津山という道が | 【塩津山】-近江国伊香郡にある山。 |
いとしげきを、 | たいそう草木が繁っているので、 | |
賤の男の | 下男が | 【賤の男】-輿をかつぐ人足たち。実践本「しつのお」は定家の仮名遣い。 |
あやしきさまどもして、 | 粗末な身なりをして、 | |
「なほからき道なりや」 | 「やはりつらい道だな」 | 【なほ】-「なを」は平安の仮名遣い。 |
と言ふを聞きて、 | と言うのを聞いて、 | 【世にふる道】-「道」は道路と世渡りの道の掛詞。 |
知りぬらむ | 知っているのだろう、 | |
行き来にならす | 行き来に慣れた | |
塩津山 | 塩津山の | |
世にふる道は | 古くからある世渡りの道は | |
からきものぞと | 辛く塩辛いものだと |
【からきもの】-「塩津山」の「塩」の縁で「からき」と詠んだ。「かゑき」は「つらい」と「塩辛い」の掛詞。 〈〉 |
「しほつ山といふみちをゆくに、しづのをのいとあやしきさまにして、猶からきみちかなといふをききてよみ侍りける 紫式部
しりぬらんゆききにならすしほつやまよにふるみちはからきものぞと」(尊経閣文庫本「続古今集」雑中 一六九八)