原文 実践女子大本 (定家本系筆頭) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
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紅梅を折りて | 紅梅を折って | 【折りて】-実践本「おる」は定家の仮名遣い。 |
里より参らすとて、 | 里から差し上げようとして、 | 【参らすとて】-「まいる」は平安の仮名遣い。 |
埋もれ木の | 埋もれ木のように | 【埋もれ木の】-底本「むまれ木」は、諸本によって「埋もれ木」と改める。 |
下にやつるる | 目立たずに咲いている | |
梅の花 | 梅の花よ | |
香をだに散らせ | せめて薫りだけでも散らしておくれ | 【香をだに散らせ】-紅梅の色艶はみすぼらしくとも、せめて香りだけは、の意。 |
雲の上まで | 宮中までも | 【雲の上】-宮中を譬喩。 |
「上東門院中宮と申し侍りける時、里より梅ををりてまゐらすとて 紫式部
むもれ木のしたにやつるる梅の花香をだにちらせ雲の上まで」(吉田兼右筆本「玉葉集」春上 六五)