原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
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歌絵に | 歌絵に | |
海人の塩焼くかたを描きて、 | 海人が塩を焼いている絵を描いて、 | |
樵り積みたる | 木を切って積み上げた | |
投げ木のもとに書きて、 | 薪の側に書いて、 | 【投げ木】-薪のこと。「投げ木」は「嘆き」を響かす。 |
返しやる。 | 返歌をやる。 | |
四方の海に | あちこちの海で | 【四方の海に塩焼く】-あちこちの海岸で藻塩を焼く、宣孝をあちこちの女性に言い寄っては恋の嘆きをしているという。 |
塩焼く海人の | 塩を焼く海人のように | |
心から | 自分から | |
焼くとはかかる | 焦がれているとはこのような | |
投げ木をや積む | 嘆きを重ねているのでしょうか | 【投げ木をや積む】-「投げ木」は「嘆き」を掛ける。係助詞「や」疑問の意。「積む」の主語はあなた。 |
「歌絵に、あまのしほやくところにこりつみたる木の本にかきて、人のもとにつかはしける
よもの海のひほくむ海士の心からやくとはかかるなげきをやつむ」(吉田兼右筆本「続千載集」雑中 一八六四)