原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) 〈適宜当サイトで改め〉 |
注釈 【渋谷栄一】 〈適宜当サイトで補注〉 |
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又の夜、 | 次の夜、 | 【又の夜】-寛弘五年(一〇〇八)九月十六日の夜。 |
月の隈なきに | 月が明るいので | |
若人たち、 | 若い女房たちが、 | 【若人たち】-若い女房たち。 |
舟に乗りて遊ぶを見やる。 | 舟に乗って遊ぶのを眺める。 | |
中島の松の根に | 中島の松の根もとに | |
さしめぐるほど、 | 舟が漕ぎ廻るところが、 | |
をかしく見ゆれば、 | 趣き深く見えるので、 | 【をかしく】-実践本「おかし」は定家の仮名遣い。 |
曇りなく | 翳りなく | |
千歳に澄める | 千年も澄んでいる | |
水の面に | 水の面に | |
宿れる月の | 宿っている月の | |
影ものどけし | 光〈面影〉ものどかなこと |
〈影:ここでは「水の面」を受け水面(みなも)の面影。投影。 通説の定義は、影の非実体性を解せず言葉を曲げる背理で誤り。 影とは光であることを言う言葉ではない。ここでは像・映像〉 |
「後一条院うまれさせたまへりける九月、つきくまなかりける夜、大二条関白、中将に侍りける、わかき人人さそひいでて、池のふねにのせて、中じまのまつかげさしまはすほど、をかしくみえ侍りければ 紫式部
くもりなくちとせにすめる水の面にやどれる月の影ものどけし」(寿本「新古今集」賀 七二二)