原文 (黒川本) |
現代語訳 (渋谷栄一) 〈適宜当サイトで改め〉 |
注釈 【渋谷栄一】 〈適宜当サイトで補注〉 |
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内裏より 御佩刀(みはかし) もて参れる 頭中将頼定、 |
内裏から 御佩刀を 持って参上した 頭中将源頼定は、 |
【御佩刀】-天皇から新皇子に賜る守り刀。御剣。 【頭中将頼定】-前出「左の頭中将」。源頼定。 |
今日 伊勢の奉幣使、 帰るほど、 |
今日は 伊勢神宮への奉幣使が 出立する日なので、 |
【伊勢の奉幣使】-底本「いと」。諸本「伊勢」と校訂する。例年九月十一日に伊勢神宮に奉幣使が発遣される。 |
昇るまじ ければ、 |
頼定は 昇殿することはできない だろうから、 |
土御門殿邸から内裏に帰参した時に出産の触穢によって〈この部分、訳から注に移した〉 |
立ちながらぞ、 |
殿は清涼殿の東庭に 立ったままで、 |
【立ちながら】-立ったままであれば穢れに触れないとされていた。源氏物語の夕顔巻で、源氏が夕顔の死に遭遇した後の病臥中、頭中将が見舞いに来た場面の応対を参照。〈→大殿の君達参りたまへど、頭中将ばかりを「立ちながら、こなたに入りたまへ」とのたまひて、〈源氏は〉御簾の内ながらのたまふ〉 |
平らかにおはします 御ありさま 奏せさせたまふ。 |
母子ともに 御健康でいらっしゃることを 奏上させなさる。 |
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2 |
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禄なども賜ひける、 | 禄なども賜わったが、 | |
そのことは見ず。 | そのことは見ていない。 | |
3 |
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御臍(おんほぞ)の緒は 殿の上。 |
御臍の緒を切る役は 殿の北の方である。 |
〈殿の上-藤原道長の正室源倫子。彰子の母。度々出てくる〉 |
4 |
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御乳付(おんちつけ)は 橘の三位<徳子>。 |
御乳付け役は 橘三位徳子である。 |
〈乳付(ちつけ・ちちつけ):新生児に最初に乳を含ませること。またその乳母。ただの乳母より格上。よって位を示す〉 |
5 |
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御乳母(おんめのと)、 もとよりさぶらひ、 むつましう 心よいかたとて、 大左衛門のおもと 仕うまつる。 |
御乳母は、 以前からお仕えしていて、 親しく 気立ての良い人として、 大左衛門のおもとが お就き申す。 |
【大左衛門のおもと】-中宮付きの女房。 |