源氏物語・柏木巻の和歌11首を抜粋一覧化し、現代語訳と歌い手を併記、原文対訳の該当部と通じさせた。
柏木個人の和歌一覧はリンク先参照。
内訳:3(夕霧)、2(柏木)、1×6(女三宮、源氏、一条御息所=柏木妻の母、大臣=かつての頭中将=柏木父、弁の君=柏木弟、※簾内女房×落葉宮:柏木妻後に夕霧妻)※最初と最後
即答 | 5首 | 40字未満 |
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応答 | 2首 | 40~100字未満 |
対応 | 3首 | ~400~1000字+対応関係文言 |
単体 | 1首 | 単一独詠・直近非対応 |
※分類について和歌一覧・総論部分参照。
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上下の句に分割したバージョン。見やすさに応じて。
なお、付属の訳はあくまで通説的理解の一例なので、訳が原文から離れたり対応していない場合、より精度の高い訳を検討されたい。
原文 (定家本校訂) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
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501 贈 |
今はとて 燃えむ煙も むすぼほれ 絶えぬ思ひの なほや残らむ |
〔柏木〕もうこれが 最期と燃えるわたしの荼毘の煙も くすぶって空に上らず あなたへの諦め切れない思いが なおもこの世に残ることでしょう |
502 答 |
立ち添ひて 消えやしなまし 憂きことを 思ひ乱るる 煙比べに |
〔女三宮〕わたしも一緒に 煙となって消えてしまいたいほどです 辛いことを 思い嘆く 悩みの競いに |
503 答 |
行方なき 空の煙と なりぬとも 思ふあたりを 立ちは離れじ |
〔柏木〕行く方もない 空の煙と なったとしても 思うお方のあたりは 離れまいと思う |
504 贈:独 |
誰が世にか 種は蒔きしと 人問はば いかが岩根の 松は答へむ |
〔源氏→女三宮〕いったい誰が 種を蒔いたのでしょうと 人が尋ねたら 誰と答えてよいのでしょう、 岩根の松は |
505 贈 |
時しあれば 変はらぬ色に 匂ひけり 片枝枯れにし 宿の桜も |
〔夕霧〕季節が廻って来たので 変わらない色に 咲きました 片方の枝は枯れてしまった この桜の木にも |
506 答 |
この春は 柳の芽にぞ 玉はぬく 咲き散る花の 行方知らねば |
〔一条御息所:柏木妻の母〕今年の春は 柳の芽に 露の玉が貫いているように【?】泣いております 咲いて散る桜の花の 行く方も知りませんので |
507 唱 |
木の下の 雫に濡れて さかさまに 霞の衣 着たる春かな |
〔大臣:頭中将:柏木父〕木の下の 雫に濡れて 逆様に 親が子の喪に 服している春です |
508 唱 |
亡き人も 思はざりけむ うち捨てて 夕べの霞 君着たれとは |
〔夕霧〕亡くなった人も 思わなかったことでしょう 親に先立って 父君に喪服を 着て戴こうとは |
509 唱 |
恨めしや 霞の衣 誰れ着よと 春よりさきに 花の散りけむ |
〔弁の君:柏木弟〕恨めしいことよ、 墨染の衣を 誰が着ようと思って 春より先に 花は散ってしまったのでしょう |
510 贈 |
ことならば 馴らしの枝に ならさなむ 葉守の神の 許しありきと |
〔夕霧→?:一条宮の簾内で応接する女房達〕同じことならば この連理の枝のように 親しくして下さい 葉守の神の 亡き方のお許があったのですからと |
511 答 |
柏木に 葉守の神は まさずとも 人ならすべき 宿の梢か |
〔簾内の女房達「少将の君といふ人をして」 ×落葉宮:旧大系・全集,御息所の歌ではあるまい:新大系〕 柏木に 葉守の神は いらっしゃらなくても みだりに人を 近づけてよい梢でしょうか |