即答 | 2首 | 40字未満 |
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応答 | 0 | 40~100字未満 |
対応 | 2首 | ~400~1000字+対応関係文言 |
単体 | 2首 | 単一独詠・直近非対応 |
※分類について和歌一覧・総論部分参照。
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上下の句に分割したバージョン。見やすさに応じて。
なお、付属の訳はあくまで通説的理解の一例なので、訳が原文から離れたり対応していない場合、より精度の高い訳を検討されたい。
原文 (定家本校訂) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
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352 贈 |
薄氷 解けぬる池の 鏡には 世に曇りなき 影ぞ並べる |
〔源氏〕薄い氷も 解けた池の 鏡のような面には 世にまたとない 二人の影が並んで映っています |
353 答 |
曇りなき 池の鏡に よろづ代を すむべき影ぞ しるく見えける |
〔紫上〕一点の曇りのない 池の鏡に 幾久しく ここに住んで行くわたしたちの影が はっきりと映っています |
354 贈 |
年月を 松にひかれて 経る人に 今日鴬の 初音聞かせよ |
〔明石〕長い年月を 子どもの成長を 待ち続けていましたわたしに 今日はその 初音を聞かせてください |
355 答 |
ひき別れ 年は経れども 鴬の 巣立ちし松の 根を忘れめや |
〔明石姫君〕別れて 何年も経ちましたが わたしは 生みの 母君を忘れましょうか |
356 独 |
めづらしや 花のねぐらに 木づたひて 谷の古巣を 訪へる鴬 |
〔明石〕何と珍しいことか、 花の御殿に住んでいる鴬が 谷の古巣を 訪ねてくれたとは |
357 独 |
ふるさとの 春の梢に 訪ね来て 世の常ならぬ 花を見るかな |
〔源氏〕昔の邸の 春の梢を 訪ねて来てみたら 世にも珍しい 紅梅の花が咲いていたことよ |
ここでの初音は、355の明石の姫君の初春の便りで、鶯は明石の姫君の例え。
その便りを見た感想が356の明石(母)の歌で、それに続く源氏(明石の姫君の父)の357は356と対になってはいるが、明石を尋ねた文脈から離れて違う花(末摘花)を尋ねて「独りごち」たもので、ハナ違いやという際どい歌である(末摘花は紅花に掛け、鼻が赤い女性の例え)。
したがって357の「世の常ならぬ花」もそのように解し(末摘花の鼻の色に掛けた表現)、さらにひるがえり、356の明石の歌の内容(めづらしや花のねぐらに木づたひて谷の古巣を訪へる鴬)も、そこへお出かけする伏線と見る(文脈は違うが、構造上源氏と明確に対になっている)。
花散里と対照的に、末摘花は登場時からネタの象徴で(寝た違い)、著者がふざけているところというメッセージ。
なお、いずれも新春の内容で、春だから356と357の歌詞がたまたま重なった(あるいは文言のリンクに意味がない)のではないことは、前後の歌の対比から明らかであるし、女性の容姿いじりが普通だったということもない。
だから357の直前で「紅梅の咲き出でたる匂ひなど、見はやす人もなきを見わたしたまひて」とぼかしている。「世の常ならぬ花」が紅梅のことなら、人目をはばかる理由がないし、その前に「いと鼻赤き御兄」も出てくる。そういうことは思っても、心に留めておくか何らかの形で昇華させる必要がある、それが良い大人の嗜み。