源氏物語1帖 桐壺 3-7d 源氏の君は主上の常に:逐語対訳

御子ども 桐壺
第3章
7d
主上の常に
大人になり
原文
定家本
明融臨模本
現代語訳
(渋谷栄一)
各自要検討
注釈
【渋谷栄一】
各自要検討
源氏の君は、 源氏の君は、  
主上の常に召しまつはせば、 主上がいつもお召しになって放さないので、  
心安く里住みもえしたまはず。 気楽に私邸で過すこともおできになれない。  
     
心のうちには、 心中では、  
ただ藤壺の御ありさまを、 ひたすら藤壺のご様子を、  
類なしと思ひきこえて、 またといない方とお慕い申し上げて、  
     
「さやうならむ人をこそ見め。 「そのような女性こそ妻にしたいものだ、 【さやうならむ人をこそ】
:以下「心にもつかず」まで源氏の心。
「心にもつかず」の下にいずれの諸本にも引用の格助詞「と」がなく、「心にもつかず」が「おぼえたまひて」を修飾する構文になっている。源氏の心をわざと韜晦させたものだろうか。心中文の文末が地の文に融合した形になっている。
似る人なくもおはしけるかな。 似た方もいらっしゃらないな。  
大殿の君、 大殿の姫君は、  
いとをかしげにかしづかれたる人とは見ゆれど、 たいそう興趣ありそうに大切に育てられている方だと思われるが、  
心にもつかず」 少しも心惹かれない」  
     
おぼえたまひて、 というように感じられて、  
幼きほどの心一つにかかりて、 幼心一つに思いつめて、  
いと苦しきまでぞおはしける。 とても苦しいまでに悩んでいらっしゃるのであった。 【いと苦しきまでぞおはしける】
:係助詞「ぞ」と「おはしける」の間に「悩み」などの語が省略されている。
御子ども 桐壺
第3章
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主上の常に
大人になり