原文 定家本 明融臨模本 |
現代語訳 (渋谷栄一) 各自要検討 |
注釈 【渋谷栄一】 各自要検討 |
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御前より、 内侍、 宣旨うけたまはり伝へて、 |
御前から 掌侍が宣旨を承り伝えて、 |
【内侍】 :掌侍(内侍司の三等官)をいう。 |
大臣参りたまふべき召しあれば、 | 大臣に御前に参られるようにとのお召しがあるので、 | |
参りたまふ。 | 参上なさる。 | |
御禄の物、 | 御禄の品物を、 | |
主上の命婦取りて賜ふ。 | 主上づきの命婦が取りついで賜わる。 | |
白き大袿に御衣一領、 | 白い大袿に御衣装一領、 | |
例のことなり。 | 例のとおりである。 | |
御盃のついでに、 | お盃を賜る折に、 |
【御盃のついでに】 :帝が左大臣に盃を廻す折に、和歌を一首詠んで廻す。 |
〔桐壺帝〕 「いときなき 初元結ひに 長き世を 契る心は 結びこめつや」 |
〔桐壺帝〕 「幼子の元服の折、 末永い仲を そなたの姫との間に結ぶ約束はなさったか」 |
【いときなき初元結ひに長き世を契る心は結びこめつや】 :帝から大臣への贈歌。 「初元結ひ」は元服のこと。 「初元結ひ」の縁語「結ぶ」に「髻を結ぶ」意と「契りを結ぶ」意とを掛ける。結婚の約束をなさったか、という問い掛け。 |
御心ばへありて、 | お心づかいを示されて、 | |
おどろかさせたまふ。 | はっとさせなさる。 |
【おどろかさせたまふ】 :大臣をはっとさせなさる、気づかせなさるということだが、つまり、念を押しなさるという意である。 |
〔左大臣〕 「結びつる心も深き 元結ひに 濃き紫の 色し褪せずは」 |
〔左大臣〕 「元服の折、 約束した心も深いものとなりましょう その濃い紫の色さえ変わらなければ」 |
【結びつる心も深き元結ひに濃き紫の色し褪せずは】 :「ずは」連語、順接の仮定条件を表す。もしも、--ならば、の意。大臣の帝の歌に対する返歌。 「濃き紫」に元結の紐の「紫」色と源氏の深い愛情の意をこめる。大臣は帝の「結びこめつや」という問い掛けに対して、第一句冒頭に「結びつる」と答えている。 「色し褪せずは」(愛情が薄れなければ)は、そのようであってほしいと言葉に表した念願、言霊信仰とみてよいだろう。しかしまた、紫の色は褪色しやすい色、そのような親心の懸念は、物語の中で不吉な予言となってしまっている。 |
と奏して、 | と奏上して、 | |
長橋より下りて舞踏したまふ。 | 長橋から下りて拝舞なさる。 |
【長橋】 :明融臨模本「か」に濁点符号あり。長橋、紫宸殿と清涼殿をつなぐ渡殿。 |