源氏物語1帖 桐壺 3-6c かうぶりしたまひて:逐語対訳

おはします殿 桐壺
第3章
6c
かうぶりし
引入の大臣
原文
定家本
明融臨模本
現代語訳
(渋谷栄一)
各自要検討
注釈
【渋谷栄一】
各自要検討
かうぶりしたまひて、 加冠なさって、  
御休所にまかでたまひて、 ご休息所にお下がりになって、  
御衣奉り替へて、 ご装束をお召し替えなさって、 【御衣奉り替へて】
:「奉る」は動詞、「着る」の尊敬語。
下りて拝したてまつりたまふさまに、 東庭に下りて拝舞なさる様子に、  
皆人涙落としたまふ。 一同涙を落としなさる。  
     
帝はた、
ましてえ忍びあへたまはず、
帝は帝で、
誰にもまして堪えきれなされず、
【帝】
:この物語では、帝の呼称が場面によって「帝(みかど)」「主上(うへ)」「内裏(うち)」などと呼称し分けられている。
「帝」は公的イメージ。
思し紛るる折もありつる昔のこと、 お悲しみの紛れる時もあった故人のことを、 【思し紛るる折もありつる昔のこと】
:先に「思し紛るとはなけれとおのづから御心移ろひてこよなく思し慰むやうなるもあはれなるわざなりけり」をさす。しばし藤壺寵愛によって桐壺更衣を失った悲しみを忘れていたこと。
とりかへし悲しく思さる。 立ち返って悲しく思われなさる。 【とりかへし悲しく思さる】
:帝は今再び昔に帰った気持ちになって悲しみを新たにする。と共に、みずからの「御心移ろひ」を認めるものでもある。
     
いとかうきびはなるほどは、 たいそうこのように幼い年ごろでは、 【いとかう】
:以下「あげ劣りや」まで帝の心。
あげ劣りやと疑はしく思されつるを、 髪上げして見劣りをするのではないかと御心配なさっていたが、  
あさましううつくしげさ添ひたまへり。 驚くほどかわいらしさも加わっていらっしゃった。  
おはします殿 桐壺
第3章
6c
かうぶりし
引入の大臣