原文 定家本 明融臨模本 |
現代語訳 (渋谷栄一) 各自要検討 |
注釈 【渋谷栄一】 各自要検討 |
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おはします殿の東の廂、 | いつもおいでになる清涼殿の東廂の間に、 |
【おはします殿の東の廂の東向きに椅子立てて】 :帝が常時おいでになるお常御殿、すなわち清涼殿。東向きの殿である。その東廂の間に東向きに帝が座る御椅子を据えて。 |
東向きに椅子立てて、 | 東向きに椅子を立てて、 | |
冠者の御座、 | 元服なさる君のお席と |
【冠者の御座】 :冠者のお席、すなわち源氏の席。 |
引入の大臣の御座、 | 加冠役の大臣のお席とが、 |
【引入の大臣の御座】 :加冠役の大臣のお席。 |
御前にあり。 | 御前に設けられている。 |
【御前にあり】 :帝の御前に冠者の席と加冠役の大臣の席とがあるという配置。 |
申の時にて源氏参りたまふ。 | 儀式は申の時で、 その時刻に源氏が参上なさる。 |
【申の時にて】 :儀式は申の時で、の意。午後四時ころ。 |
角髪結ひたまへるつらつき、 | 角髪に結っていらっしゃる顔つきや、 | |
顔のにほひ、 | 童顔の色つやは、 | |
さま変へたまはむこと惜しげなり。 | 髪形をお変えになるのは惜しい感じである。 | |
大蔵卿、 蔵人仕うまつる。 | 大蔵卿が理髪役を奉仕する。 |
【大蔵卿蔵人仕うまつる】 :大蔵卿が理髪係をお勤めする。 「蔵人」は、ここでは官職名ではなく、帝の理髪係を勤めるので、こう呼んだもの。 |
いと清らなる御髪を削ぐほど、 | たいへん美しいお髪を削ぐ時、 | |
心苦しげなるを、 | いたいたしそうなのを、 | |
主上は、 | 主上は、 | |
「御息所の見ましかば」と、 | 「亡き母の御息所が見たならば」と、 |
【御息所の見ましかば】 :帝の心。故桐壺の更衣が生きていて、この儀式を見たならばどんなに嬉しく思ったことであろうに、の意。 「ましかば」は反実仮想。 |
思し出づるに、 | お思い出しになると、 | |
堪へがたきを、 | 涙が抑えがたいのを、 | |
心強く念じかへさせたまふ。 | 思い返してじっとお堪えあそばす。 |