源氏物語1帖 桐壺 3-6b おはします殿の東の廂:逐語対訳

御童姿 桐壺
第3章
6b
おはします殿
かうぶりし
原文
定家本
明融臨模本
現代語訳
(渋谷栄一)
各自要検討
注釈
【渋谷栄一】
各自要検討
おはします殿の東の廂、 いつもおいでになる清涼殿の東廂の間に、 【おはします殿の東の廂の東向きに椅子立てて】
:帝が常時おいでになるお常御殿、すなわち清涼殿。東向きの殿である。その東廂の間に東向きに帝が座る御椅子を据えて。
東向きに椅子立てて、 東向きに椅子を立てて、  
冠者の御座、 元服なさる君のお席と 【冠者の御座】
:冠者のお席、すなわち源氏の席。
引入の大臣の御座、 加冠役の大臣のお席とが、 【引入の大臣の御座】
:加冠役の大臣のお席。
御前にあり。 御前に設けられている。 【御前にあり】
:帝の御前に冠者の席と加冠役の大臣の席とがあるという配置。
     
申の時にて源氏参りたまふ。 儀式は申の時で、 その時刻に源氏が参上なさる。 【申の時にて】
:儀式は申の時で、の意。午後四時ころ。
     
角髪結ひたまへるつらつき、 角髪に結っていらっしゃる顔つきや、  
顔のにほひ、 童顔の色つやは、  
さま変へたまはむこと惜しげなり。 髪形をお変えになるのは惜しい感じである。  
     
大蔵卿、 蔵人仕うまつる。 大蔵卿が理髪役を奉仕する。 【大蔵卿蔵人仕うまつる】
:大蔵卿が理髪係をお勤めする。
「蔵人」は、ここでは官職名ではなく、帝の理髪係を勤めるので、こう呼んだもの。
     
いと清らなる御髪を削ぐほど、 たいへん美しいお髪を削ぐ時、  
心苦しげなるを、 いたいたしそうなのを、  
主上は、 主上は、  
「御息所の見ましかば」と、 「亡き母の御息所が見たならば」と、 【御息所の見ましかば】
:帝の心。故桐壺の更衣が生きていて、この儀式を見たならばどんなに嬉しく思ったことであろうに、の意。
「ましかば」は反実仮想。
思し出づるに、 お思い出しになると、  
堪へがたきを、 涙が抑えがたいのを、  
心強く念じかへさせたまふ。 思い返してじっとお堪えあそばす。  
御童姿 桐壺
第3章
6b
おはします殿
かうぶりし