原文 定家本 明融臨模本 |
現代語訳 (渋谷栄一) 各自要検討 |
注釈 【渋谷栄一】 各自要検討 |
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この君の御童姿、 | この君のお童子姿を、 | |
いと変へまうく思せど、 | とても変えたくなくお思いであるが、 | |
十二にて御元服(奥入11)したまふ。 | 十二歳でご元服をなさる。 |
【十二にて御元服したまふ】 :源氏十二歳で元服する。当時の一般的年齢である。明融臨模本「御」の右傍に「ン」とあるので「おほんげんぷく」と読む。 |
居起ち思しいとなみて、 | 御自身お世話を焼かれて、 |
【居立ち思しいとなみて】 :帝御自身で。 |
限りある事に事を添へさせたまふ。 | 作法どおりの上にさらにできるだけの事をお加えあそばす。 | |
一年の春宮の御元服、 | 先年の東宮の御元服が、 |
【一年の春宮の御元服南殿にてありし儀式】 :「一年(ひととせ)」は先年、或る年の意。東宮の御元服の儀式が南殿(紫宸殿)で行われた様子は語られない。 |
南殿にてありし儀式、 | 紫宸殿で執り行われた儀式が、 |
【儀式】 :『古典セレクション』では「儀式の」と校訂するが、明融臨模本・大島本「きしき」とあり格助詞「の」はナシ。 |
よそほしかりし御響きに落とさせたまはず。 | いかめしく立派であった世の評判にひけをおとらせにならない。 | |
所々の饗など、 | 各所での饗宴などにも、 |
【所々の饗など】 :宮中の諸所の殿舎で賜るごちそう。 |
内蔵寮穀倉院など、 | 内蔵寮や穀倉院など、 |
【内蔵寮穀倉院など】 :この前後、地の文からやがて心内文に移る。 |
公事に仕うまつれる、 | 規定どおり奉仕するのでは、 | |
おろそかなることもぞと、 | 行き届かないことがあってはいけないと、 |
【おろそかなることもぞ】 :連語「もぞ」(係助詞「も」+係助詞「ぞ」)は将来起こる事態に対する危惧の意を表す。 「行き届かないことがあってはいけない」、帝の心の表出である。 |
とりわき仰せ言ありて、 | 特別に勅命があって、 | |
清らを尽くして仕うまつれり。 | 善美を尽くしてお勤め申した。 |