源氏物語1帖 桐壺 3-6a この君の御童姿:逐語対訳

光る君 桐壺
第3章
6a
御童姿
おはします殿
原文
定家本
明融臨模本
現代語訳
(渋谷栄一)
各自要検討
注釈
【渋谷栄一】
各自要検討
この君の御童姿、 この君のお童子姿を、  
いと変へまうく思せど、 とても変えたくなくお思いであるが、  
十二にて御元服(奥入11)したまふ。 十二歳でご元服をなさる。 【十二にて御元服したまふ】
:源氏十二歳で元服する。当時の一般的年齢である。明融臨模本「御」の右傍に「ン」とあるので「おほんげんぷく」と読む。
     
居起ち思しいとなみて、 御自身お世話を焼かれて、 【居立ち思しいとなみて】
:帝御自身で。
限りある事に事を添へさせたまふ。 作法どおりの上にさらにできるだけの事をお加えあそばす。  
     
一年の春宮の御元服、 先年の東宮の御元服が、 【一年の春宮の御元服南殿にてありし儀式】
:「一年(ひととせ)」は先年、或る年の意。東宮の御元服の儀式が南殿(紫宸殿)で行われた様子は語られない。
南殿にてありし儀式、 紫宸殿で執り行われた儀式が、 【儀式】
:『古典セレクション』では「儀式の」と校訂するが、明融臨模本・大島本「きしき」とあり格助詞「の」はナシ。
よそほしかりし御響きに落とさせたまはず。 いかめしく立派であった世の評判にひけをおとらせにならない。  
     
所々の饗など、 各所での饗宴などにも、 【所々の饗など】
:宮中の諸所の殿舎で賜るごちそう。
内蔵寮穀倉院など、 内蔵寮や穀倉院など、 【内蔵寮穀倉院など】
:この前後、地の文からやがて心内文に移る。
公事に仕うまつれる、 規定どおり奉仕するのでは、  
おろそかなることもぞと、 行き届かないことがあってはいけないと、 【おろそかなることもぞ】
:連語「もぞ」(係助詞「も」+係助詞「ぞ」)は将来起こる事態に対する危惧の意を表す。
「行き届かないことがあってはいけない」、帝の心の表出である。
とりわき仰せ言ありて、 特別に勅命があって、  
清らを尽くして仕うまつれり。 善美を尽くしてお勤め申した。  
光る君 桐壺
第3章
6a
御童姿
おはします殿