原文 定家本 明融臨模本 |
現代語訳 (渋谷栄一) 各自要検討 |
注釈 【渋谷栄一】 各自要検討 |
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世にたぐひなしと見たてまつりたまひ、 | 世の中にまたとないお方だと拝見なさり、 |
【見たてまつりたまひ】 :帝が藤壺を拝見なさる。『古典セレクション』では弘徽殿女御が東宮をとする。また『新大系』では源氏が藤壺をとする。 |
名高うおはする宮の御容貌にも、 | 評判高くおいでになる宮のご容貌に対しても、 |
【名高うおはする宮の】 :藤壺の宮、評判高くおいでになる宮。 「にも」は「に対しても」。藤壺と源氏の容貌の美しさが対比して語られる。 |
なほ匂はしさはたとへむ方なく、 うつくしげなるを、 | やはり照り映える美しさにおいては比較できないほど美しそうなので、 |
【なほ匂はしさは】 :「なほ」と「は」があることに注意。やはり、源氏の生き生きとした美しさは。 |
世の人、 「光る君」と聞こゆ。 |
世の中の人は、 「光る君」とお呼び申し上げる。 |
【世の人光る君と聞こゆ】 :世の中の人びとは「光る君」と申し上げる。後に「光る君といふ名は高麗人のめできこえてつけたてまつりける」とも語られる。 |
藤壺ならびたまひて、 | 藤壺もお並びになって、 | |
御おぼえもとりどりなれば、 | 御寵愛がそれぞれに厚いので、 | |
「かかやく日の宮」と聞こゆ。 | 「輝く日の宮」とお呼び申し上げる。 |
【かかやく日の宮と聞こゆ】 :「かかやく」は近世初期まで清音(日本霊異記、訓釈・新撰字鏡・日葡辞書)。 「かかやく日の宮」。こうして、この物語のヒーロー、ヒロインが並び揃う。 |