源氏物語1帖 桐壺 3-3b 弁もいと才かしこき博士:逐語対訳

高麗人 桐壺
第3章
3b
博士
帝かしこき
原文
定家本
明融臨模本
現代語訳
(渋谷栄一)
各自要検討
注釈
【渋谷栄一】
各自要検討
弁も、
いと才かしこき博士にて、
右大弁も、
たいそう優れた学識人なので、
【博士】
:学識のある人。大学寮に諸道の博士がいるが、ここは普通名詞的に使われたもの。
言ひ交はしたることどもなむ、 語り合った事柄は、  
いと興ありける。 たいへんに興味深いものであった。  
     
文など作り交はして、 漢詩文などを作り交わして、 【文など】
:漢詩文をさす。
今日明日帰り去りなむとするに、 今日明日のうちにも帰国する時に、  
かくありがたき人に対面したるよろこび、 このようにめったにない人に対面した喜びや、 【かくありがたき人】
:若宮をさす。
かへりては悲しかるべき心ばへをおもしろく作りたるに、 お目にかかってかえって悲しい思いがするにちがいないという気持ちを趣き深く作ったのに対して、 【かへりては】
:「却って」に「帰りて」をひびかす。お会いできてうれしかっただけに、かえって悲しい、の意。
御子もいとあはれなる句を作りたまへるを、 御子もたいそう心を打つ詩句をお作りになったので、  
限りなうめでたてまつりて、 この上なくお褒め申して、  
いみじき贈り物どもを捧げたてまつる。 素晴らしいいくつもの贈物を差し上げる。  
     
朝廷よりも多くの物賜はす。 朝廷からもたくさんの贈物を御下賜なさる。  
     
おのづから事広ごりて、 自然と噂が広がって、  
漏らさせたまはねど、 お漏らしあそばさないが、  
春宮の祖父大臣など、 東宮の祖父大臣などは、 【春宮の祖父大臣】
:一の親王の祖父。右大臣。弘徽殿女御の父親。
いかなることにかと思し疑ひてなむありける。 どのようなわけでかとお疑いになっているのであった。 【思し疑ひてなむありける】
:以上で高麗人の相人の予言の段は終了。文末は「なむありける」で閉じられる。
高麗人 桐壺
第3章
3b
博士
帝かしこき