原文 定家本 明融臨模本 |
現代語訳 (渋谷栄一) 各自要検討 |
注釈 【渋谷栄一】 各自要検討 |
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今は内裏にのみさぶらひたまふ。 | 今は内裏にばかりお暮らしになっている。 |
【今は内裏にのみさぶらひたまふ】 :主語は若宮。 |
七つになりたまへば、 | 七歳におなりになったので、 |
【七つになりたまへば】 :若宮七歳。祖母の死から一年を経過する。学問を始める年齢である。 |
読書始めなどせさせたまひて、 | 読書始めなどをおさせになったところ、 |
【読書始め】 :読書始(ふみはじ)めの儀式。 「せさせたまひて」の「させ」(使役の助動詞)「たまひ」(尊敬の補助動詞)、帝が若宮にさせなさる意。 |
世に知らず聡う賢くおはすれば、 | この世に類を知らないくらい聡明で賢くいらっしゃるので、 | |
あまり恐ろしきまで御覧ず。 | 空恐ろしいまでにお思いあそばされる。 | |
〔桐壺帝〕 「今は誰れも誰れもえ憎みたまはじ。 |
〔桐壺帝〕 「今はどなたもどなたもお憎みなされまい。 |
【今は】 :以下「らうたうしたまへ」まで帝の詞。 |
母君なくてだにらうたうしたまへ」とて、 | 母君がいないということだけでもおかわいがりください」と仰せになって、 | |
弘徽殿などにも渡らせたまふ御供には、 | 弘徽殿などにもお渡りあそばすお供としては、 | |
やがて御簾の内に入れたてまつりたまふ。 | そのまま御簾の内側にお入れ申し上げなさる。 |
【やがて御簾の内に入れたてまつりたまふ】 :謙譲の補助動詞「たてまつり」は帝の若宮に対する敬意。 「帝が若宮をそのまま妃方の部屋の中にお入れ申し上げなさる」。異例のかわいがりようである。 |
いみじき武士、 仇敵なりとも、 | 恐ろしい武士や仇敵であっても、 |
【いみじき武士仇敵なりとも】 :若宮の愛くるしい美貌を語る。 |
見てはうち笑まれぬべきさまのしたまへれば、 | 見るとつい微笑まずにはいられない様子でいらっしゃるので、 | |
えさし放ちたまはず。 | 放っておくこともおできになれない。 |
【えさし放ちたまはず】 :弘徽殿女御も若宮を放っておくことができない。 |