源氏物語1帖 桐壺 3-2a 今は内裏にのみ:逐語対訳

かの御祖母 桐壺
第3章
2a
今は内裏に
女皇女たち
原文
定家本
明融臨模本
現代語訳
(渋谷栄一)
各自要検討
注釈
【渋谷栄一】
各自要検討
今は内裏にのみさぶらひたまふ。 今は内裏にばかりお暮らしになっている。 【今は内裏にのみさぶらひたまふ】
:主語は若宮。
     
七つになりたまへば、 七歳におなりになったので、 【七つになりたまへば】
:若宮七歳。祖母の死から一年を経過する。学問を始める年齢である。
読書始めなどせさせたまひて、 読書始めなどをおさせになったところ、 【読書始め】
:読書始(ふみはじ)めの儀式。
「せさせたまひて」の「させ」(使役の助動詞)「たまひ」(尊敬の補助動詞)、帝が若宮にさせなさる意。
世に知らず聡う賢くおはすれば、 この世に類を知らないくらい聡明で賢くいらっしゃるので、  
あまり恐ろしきまで御覧ず。 空恐ろしいまでにお思いあそばされる。  
     
〔桐壺帝〕
「今は誰れも誰れもえ憎みたまはじ。
〔桐壺帝〕
「今はどなたもどなたもお憎みなされまい。
【今は】
:以下「らうたうしたまへ」まで帝の詞。
     
母君なくてだにらうたうしたまへ」とて、 母君がいないということだけでもおかわいがりください」と仰せになって、  
弘徽殿などにも渡らせたまふ御供には、 弘徽殿などにもお渡りあそばすお供としては、  
やがて御簾の内に入れたてまつりたまふ。 そのまま御簾の内側にお入れ申し上げなさる。 【やがて御簾の内に入れたてまつりたまふ】
:謙譲の補助動詞「たてまつり」は帝の若宮に対する敬意。
「帝が若宮をそのまま妃方の部屋の中にお入れ申し上げなさる」。異例のかわいがりようである。
     
いみじき武士、 仇敵なりとも、 恐ろしい武士や仇敵であっても、 【いみじき武士仇敵なりとも】
:若宮の愛くるしい美貌を語る。
見てはうち笑まれぬべきさまのしたまへれば、 見るとつい微笑まずにはいられない様子でいらっしゃるので、  
えさし放ちたまはず。 放っておくこともおできになれない。 【えさし放ちたまはず】
:弘徽殿女御も若宮を放っておくことができない。
かの御祖母 桐壺
第3章
2a
今は内裏に
女皇女たち