原文 定家本 明融臨模本 |
現代語訳 (渋谷栄一) 〈適宜改め〉 |
注釈 【渋谷栄一】 〈適宜独自改め〉 |
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風の音、 虫の音 につけて、 |
風の音や、 虫の音を 聞くにつけて、 |
【風の音虫の音につけて】 :物語は再び現在にもどる。 |
もののみ 悲しう 思さるるに、 |
〈そのことばかり〉 ×何とはなく一途に 悲しく 思われなさるが、 |
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弘徽殿 には、 |
弘徽殿女御 におかれては、 |
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久しく 上の御局にも 参う上り たまはず、 |
久しく 上の御局にも お上がりに ならず、 |
【上の御局】 :清涼殿の夜の御殿のすぐ北隣にある弘徽殿の上局の間。 |
月の おもしろきに、 |
月が 〈白く〉美しいので、 |
〈学説はこう解さないが、古文の「月のおもしろ」は全て①面白=月面が白いほぼ満月で、②おもむきある様子と解す。独自。古文を現代文的に一義的なものと思って見ない。言葉に幅があるから学説により議論されている〉 |
夜更くる まで 遊びをぞ したまふ なる。 |
夜が更ける まで 管弦の遊びを なさっている ようである。 |
【したまふなる】 :「なる」は伝聞推定の助動詞。帝の耳に入ってくるのである。 |
いと すさまじう、 |
実に 興ざめで、 |
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ものし と聞こし 召す。 |
不愉快だ、 とお聞き あそばす。 |
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このごろの 御気色を 見たてまつる 上人、 女房などは、 |
最近の 御様子を 拝する 殿上人や 女房などは、 |
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かたはら いたし と聞きけり。 |
〈いたたまれない〉 ×はらはらする思い で聞いていた。 |
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いと おし立ち かどかどしき ところ ものしたまふ 御方にて、 |
たいへんに 気が強くて とげとげしい 性質を お持ちの 方なので、 |
【いとおし立ち】 :以下「なるべし」まで、『首書源氏物語』は「地」と草子地であることを指摘。『岷江入楚』は「ことにもあらず」以下を「草子地なり」と指摘する。弘徽殿女御の強い性格を語る。 |
ことにも あらず 思し消ちて |
何とも お思いなさらず 無視して |
【ことにもあらず思し消ちて】 :主語は弘徽殿女御。桐壺更衣の死や帝の悲嘆を。問題にもせず無視する、意。 |
もてなし たまふ なるべし。 |
振る舞って いらっしゃる のであろう。 |
【もてなしたまふなるべし】 :「なる」(断定の助動詞)「べし」(推量の助動詞)の主体者は語り手である。 |