源氏物語1帖 桐壺 1-4d 御胸つとふたがりて:逐語対訳

限りあらむ道 桐壺
第1章
4d
御胸つと
御子はかく
原文
定家本
明融臨模本
現代語訳
(渋谷栄一)
各自要検討
注釈
【渋谷栄一】
各自要検討
御胸
つと
ふたがりて、
お胸が
ひしと
塞がって、
【御胸つとふたがりて】
:以下、後に残された帝の様子。
「御使の行き交ふ」とあるから、最初に遣わされた使者が帰って来るのが待ちきれずにまた次の使者を発するというように、次々と使者が派遣されたことがわかる。明融臨模本には「御むねのみ」とあるが、「のみ」は後人の補入で、明融臨模本本来の本文ではない。大島本にも「のみ」は無い。『集成』『新大系』は「御胸つと」と校訂する。『古典セレクション』は後人の補入語を採用して「御胸のみつと」としている。校訂付記には掲載せず。
つゆ
まどろまれず、
少しも
うとうとなされず、
 
明かし
かねさせ
たまふ。
夜を明かし
かね
あそばす。
 
     
御使の行き交ふほどもなきに、 勅使が行き来する間もないうちに、  
なほいぶせさを限りなくのたまはせつるを、 しきりに気がかりなお気持ちをこの上なくお漏らしあそばしていらしたところ、  
「夜半うち過ぐるほどになむ、 「夜半少し過ぎたころに、 【夜半うち過ぐるほどになむ絶え艦てたまひぬる】
:更衣の里邸の人々の詞。更衣の死去を告げる。
絶えはてたまひぬる」とて泣き騒げば、 お亡くなりになりました」と言って泣き騒ぐので、  
御使もいとあへなくて帰り参りぬ。 勅使もたいそうがっかりして帰参した。  
     
聞こし召す御心まどひ、 お耳にあそばす御心の動転、  
何ごとも思し召しわかれず、 どのような御分別をも失われて、  
籠もりおはします。 引き籠もっておいであそばす。  
限りあらむ道 桐壺
第1章
4d
御胸つと
御子はかく