源氏物語1帖 桐壺 1-3 この御子三つになり:逐語対訳

事にふれ 桐壺
第1章
3
この御子三つ
その年の夏
原文
定家本
明融臨模本
現代語訳
(渋谷栄一)
各自要検討
注釈
【渋谷栄一】
各自要検討
この御子三つになりたまふ年、 この御子が三歳におなりの年に、 【この御子三つになりたまふ年】
:その後二年が経過し、御子三歳の物語が語られる。
御袴着のこと一の宮のたてまつりしに劣らず、 御袴着の儀式を一宮がお召しになったのに劣らず、 【一の宮のたてまつりしに劣らず】
:以下、さまざまな儀式が兄一宮と比較されながら語られていく。
「たてまつる」は「着る」の尊敬語。
内蔵寮、 納殿の物を尽くして、 内蔵寮や納殿の御物をふんだんに使って、  
いみじうせさせたまふ。 大変に盛大におさせあそばす。 【いみじうせさせたまふ】
:帝主催の袴着の儀式である。
「せさせたまふ」は最高敬語。実際には官人をしてさせたもの。
     
それにつけても、 そのことにつけても、  
世の誹りのみ多かれど、 世人の非難ばかりが多かったが、  
この御子のおよすげもておはする この御子が成長なさって行かれる 【およすげ】
:「耆 オヨス」(類聚名義抄)。
「およす」に様子や気配などの意を表す「気」(け、「げ」にも転じる)が付いた語。活用語尾の清濁は不明。『河海抄』には濁付がある。『集成』『古典セレクション』は「およすけ」とし、『新大系』は「およすげ」とする。
御容貌心ばへありがたくめづらしきまで見えたまふを、 お顔だちやご性質が世間に類なく素晴らしいまでにお見えになるので、 【御容貌心ばへありがたくめづらしきまで見えたまふを】
:赤児から三歳(幼児)に成長した容貌や性質の類まれな素晴らしさが語られる。
「を」を接続助詞の確定条件「ので」と見る説(今泉忠義・古典セレクション)と格助詞の目的格「を」と見る説(待井新一)とがある。
え嫉みあへたまはず。 お憎みきれになれない。 【え嫉みあへたまはず】
:「え--ず」(打消の助動詞)、「敢へ」は、「すっかり~する」の意。それに、不可能の意が加わる。尊敬語「たまふ」があるので、主語は三位以上の高貴な男性貴族や女御たちである。
     
ものの心知りたまふ人は、 ものごとの情理がお分かりになる方は、  
「かかる人も世に出でおはするものなりけり」と、 「このような方もこの末世にお生まれになるものであったよ」と、 【かかる人も世に出でおはするものなりけり】
:「なり」(断定の助動詞)、「けり」(過去の助動詞、詠嘆)。物の情理が分かる人の、詞とも心とも考えらる。いずれにしても直接引用、直接話法的な一文である。
あさましきまで目をおどろかしたまふ。 驚きあきれる思いで目を見張っていらっしゃる。  
事にふれ 桐壺
第1章
3
この御子三つ
その年の夏